2017 Fiscal Year Research-status Report
男性統合失調症におけるX染色体上CpGアイランドの異常高メチル化の機能解析
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16K19765
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大塚 郁夫 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40722880)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 統合失調症 / X染色体 / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症の発症率や重症度に性差があることは知られているが、その生物学的機序は不明である。また、統合失調症の発症にはDNAメチル化などのエピジェネティクスが深く関連していると考えられているものの、現時点では統合失調症の大規模サンプルを用いたDNAメチル化の網羅的解析は世界的にも報告が少なく、GWASなどのゲノム配列解析に比して知見は遅れている。我々は二つの異なるDNAメチル化頻度解析手法(DNAメチル化頻度網羅的解析・メチル化特異的定量PCR法)とヒト末梢血サンプルセットを用いて、男性統合失調症の約3割において、X染色体上のあるCpGアイランドが異常に高メチル化(通常の10%前後に比して90%前後)している現象を見出した。同領域と重なるTAF1遺伝子はX染色体性知的障害やジストニアとの関連は示唆されているが、統合失調症との関連は報告がなく、また本現象の生物学的意義、細胞、生体への影響は不明である。H28年度は予備的研究で対象とした上記のサンプルについて、MassARRAYを用いて、同CpGアイランド内のすべてのCpGサイトのメチル化頻度を測定し、予備的研究のメチル化異常の結果を再現することに成功した。また異常高メチル化を認めた男性統合失調症12名については、再採血を行い、異常高メチル化が維持されていることを確認した。H29年度は、異常高メチル化群の末梢血について、関連遺伝子TAF1のmRNA発現量を測定し、対照群との比較を行った。またヒト男性由来神経幹細胞の培養系を確立し、CRISPR/Cas9法にて異常高メチル化領域のDNA配列の機能欠失を行い、細胞表現型にどのような影響があるかを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は一部の男性統合失調症における目的のCpGアイランド内の異常高メチル化を追試することができ、H29年度は異常高メチル化群の末梢血において関連遺伝子のmRNA発現変化があるか、さらにはヒト男性由来神経幹細胞の培養系を確立し、CRISPR/Cas9法にて異常高メチル化領域のDNA配列の機能欠失を行うなど、機能的意義について迫るための研究内容を順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
統合失調症男性および健常者男性の末梢血・死後脳サンプルを追加して、目的のCpGアイランドのメチル化頻度およびTAF1遺伝子のmRNA発現の相関を解析する。 CRISPR/Cas9及びCRISPRiの手法を用いて、ヒト神経幹細胞において同CpGアイランド領域の機能を欠失、または転写因子結合を阻害することで、細胞表現型にどのような変化を来すかを解析する。さらには同CpGアイランドの機能を修飾した神経系細胞とコントロールの神経系細胞の遺伝子発現をDNAマイクロアレイにより検出・比較し、同領域のもつ機能を網羅的な遺伝子発現変動の視点から解析する。
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