2017 Fiscal Year Research-status Report
タウ・アミロイドPETによる頭部外傷後症候群の病態解明に関する研究
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16K19789
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
高畑 圭輔 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員(任常) (20645311)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タウPET / 頭部外傷 / 慢性外傷性脳症 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本課題に関して下記のような活動を行い、研究が進展した。(1)本研究で使用したタウトレーサーである[11C]PBB3が頭部外傷患者の脳内のタウ病変に結合していることを確認するために、海外の研究機関と連携して神経病理学的な検討を行った。具体的には、Mayo clinicのDepartment of Neuroscienceの協力により、頭部外傷によって引き起こされるタウオパチーである慢性外傷性脳症の脳標本4検体に対して、PHF-1、CP-13による免疫染色、PBB3による蛍光染色を行った。その結果、近年の報告の通り慢性外傷性脳症の脳内では深部灰白質の脳血管周囲に神経原線維変化が認められること、またPBB3が神経原線維変化に一致して集積していることが確認された。以上より、PBB3が頭部外傷の脳内のタウ病変に結合していることが示された。本結果は、[11C]PBB3を用いたPET画像所見の解釈を裏付ける重要な根拠となる。(2)また、昨年に引き続き、[11C]PBB3を用いたPET画像によるタウ病変の定量評価方法として、大脳皮質内で数学的に参照領域を決定する手法と、multilinear reference tissue model (MRTMo)および斑状のターゲットをPETで検出するための手法Methods for diagnosing deseases and evaluat ing treatments therefor using PET (US patento No. US8652440)を組み合わせた指標(PBB3 binding capacity)に関して妥当性の検証を行った。検証の結果、頭部外傷以外の疾患(アルツハイマー病など)でも、タウ病変をより鋭敏に捉えられることを確認したため、最終的な解析法として採用した。(3)PET画像データと各種臨床症状の関係を検討した結果、脳内のタウ病変と遅発性精神病症状の重症度との間に関連性が認められることを明らかにした。これは、脳内のタウ病変が頭部外傷による遅発性症候に関連することを示す重要な知見である。 以上の結果を論文にまとめ、平成30年度内に投稿する方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の被験者のリクルート、データの取得、画像解析などを既に終えており、現在は論文投稿を控えた段階にある。また、昨年度までの課題であった、より症状の強い頭部外傷患者のリクルートも実現した。以上より、課題全体として概ね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、国際学会(Neuroreceptor mapping2018、ロンドン)での発表を行うとともに、海外の学術誌への論文投稿を行う予定である。また筆者が所属する研究部において開発された[18F]PM-PBB3は、タウトレーサーとして[11C]PBB3よりも良好な性質を有していることが判明しており、個人レベルでのタウ病変の生前評価が可能となる可能性がある。今後は本課題で構築したリクルート体制、PET画像解析技術を活用して、[18F]PM-PBB3を用いた頭部外傷研究へと発展させる方針である。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度の予算は、ワークステーションの購入や海外での学会発表に関する旅費・参加費用などに支出したが、一部の画像解析ソフトウェアの購入がなくなり、結果として上記金額を繰り越すことになった。 (使用計画) 平成30年度は、本課題で得られた成果を国際学会で発表する予定であり、そのための参加費に使用する予定である。また論文投稿のための費用(掲載費、英文校正)などにも使用する予定である。また、論文査読の過程でデータの追加を求められる可能性もあり、その際にも使用する可能性がある。
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Research Products
(3 results)