2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K19801
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川住 祐介 東北大学, 医学系研究科, 講師 (00513540)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 死亡時画像診断 / CT / 肺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、体表からの検案では死因不明とされる異状死体について、死後CTの肺画像で死因を診断することである。2009年から蓄積してきた症例に、2016年度に新たに撮影した症例を加え、検討を行ってきた。
肺野の陰影有無について:肺野に生前と同様のX線透過性が保たれ、陰影を認めない症例は、ほぼ死因に低体温症が関与していることが分かった。ただし、肺野に陰影を認める低体温死症例もあったため、「肺野に陰影を認める」ことで低体温の関与を除外することは困難である。
肺野陰影性状について:溺水の肺に関しては、小葉中心性の粒状~小斑状陰影主体のパターンと、間質肥厚+すりガラス影主体のパターンの大きく2つに分かれることを経験していたが、2016年度の追加症例でも概ね同じ結果であった。しかし通常の死後変化との区別が困難である肺陰影を有する溺水症例を何例か経験したため、死亡状況や死後経過時間等をあわせた分類を試みる予定である。また心臓関連死の症例において、虚血性心疾患はびまん性水腫様の陰影を、非虚血性心疾患では就下様の陰影(通常の死後変化のような陰影)を示す傾向があることが統計学的に示された。小児に関しては、剖検においても死因が不明な症例はほとんど含気が消失し、肺炎など肺に何らかの異状が存在する場合のほうが含気が残存する傾向であった。正確な原因はまだ不明であるが、少なくとも死後CTの肺所見は、成人と小児とでは分けて判断することが必要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
警察の方針変更により、2016年度の解剖前CT検査が激減した。症例数の増加が予想をかなり下回ったため、死後CT肺陰影の評価および分類が滞ってしまった。そのため肺陰影を用いた死因推定を検討する段階にはまだ到達できていない。
死後CT肺volumeおよび平均CT値測定による肺重量推定、さらにその肺重量からの死因推定に関しては、肺野は他の臓器よりも様々な死後変化がより生じやすく、臨床と同様の方法では測定が困難であることが分かってきたため、現在難航中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度より再び警察の方針が変わったため、2015年度以前と同様のCT件数が予想される。遅れている死後CT肺陰影の評価および分類を進め、今年度の後半には、肺陰影と死因との相関関係を調べ、肺陰影を用いた死因推定の検討に着手したい。
難航している死後CT肺volumeおよび平均CT値測定に関しては、従来とは異なる手法での測定法も検討していく。将来的にはプログラムによる自動測定も目指したい。
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Causes of Carryover |
1.警察の方針変更によりCT施行数が激減したため、保存データ量があまり増加せず、保存デバイスおよびメディアの追加購入が必要なかった。また症例が増加しなかったことにより研究の進行が遅れ、解析ソフトやワークステーションを購入し使用する段階にまで至らなかった。
2.家庭の事情により、予定していた学会などへの参加(特に海外)が困難であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CT撮影データの保存およびバックアップのためのストレージデバイス、メディアの購入、データ解析のためのワークステーションやソフトウェアの購入、情報収集や発表のため国内および国際学会・研究会への参加費として使用する予定である。
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