2017 Fiscal Year Research-status Report
放射線による晩期炎症における遅発性活性酸素種の関与
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16K19836
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小橋川 新子 (菓子野新子) 京都大学, 原子炉実験所, 研究員 (70637628)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遅発性活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題で重要な仮説、「がん細胞では遅発性活性酸素による細胞死の寄与が少ない」ということの検証を行った。この仮説が証明できれば、遅発性活性酸素による致死作用をがん細胞にもたらす一方で、正常細胞を保護する両立が可能となる。これまでに以下の実験を行った。 1.正常細胞とがん細胞における遅発性活性酸素の誘導レベルの違いを検証すること 2.正常細胞とがん細胞における遅発性活性酸素がもたらす細胞死の違いを検証すること 細胞は、がん細胞としてヒト膵臓がん由来MiaPaca-2細胞、大腸がん由来RKOを用いた。正常細胞としては、正常ヒト由来HE23及びHE49細胞を用いた。正常細胞においては、すでに遅発性活性酸素が照射3日後をピークに増えることを明らかにしているが、今回調べたMiaPaca-2、及びRKOでも、照射3日後時点で遅発性活性酸素が誘導されていることが分かった。しかしながら、遅発性活性酸素をアスコルビン酸誘導体で除去した際の効果は、正常細胞では顕著に生存率が増加するのに対して、がん細胞では生存率の増加が見られなかった。遅発性活性酸素をアスコルビン酸誘導体で除去した際の照射3日後時点における残存DNA切断数は、正常細胞では未処理群に比べて顕著に抑制されていたが、がん細胞2種(MiaPaca-2とRKO)ではその抑制が見られなかった。以上の結果を総合的に見ると、放射線照射後の遅発性活性酸素誘導は正常細胞とがん細胞の両者でみられるものの、遅発性活性酸素を抑制することによる細胞生存の回復効果は、正常細胞のみでみられることがわかった。この結果は、放射線治療の対象照射野として想定される正常細胞とがん細胞の混在する細胞組織において、照射数日後から生じる遅発性活性酸素をアスコルビン酸誘導体などで除去することで、がんの殺細胞効果を抑制せずに正常細胞を保護することが可能であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞を用いた解析は順調に進行しているが、マウスによる正常組織への影響評価が予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では口腔癌を対象にして、放射線とアスコルビン酸誘導体の併用による抗腫瘍細胞効果と口内炎への影響を評価しようとしていた。様々ながんを対象とすることで、遅発性活性酸素の生物学的意義を明らかにすることができると考え、幅広いがん細胞を用いて解析することにしている。正常細胞への反応評価についても口内炎に限らず、皮膚の炎症反応や紅斑、老化誘導を評価することを考えており、30年度に動物モデルを含めた正常組織での反応を重点的に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
28年度に育児休暇の取得しており、29年度は28年度分の経費も計上していたが、すべて使用することは出来なかった。29年度の中旬において30年度まで研究期間を延長する方針に決めた。以上の理由により次年度使用額が生じた。 30年度は残額を全て使用し、計画している研究を全て実施する予定である。
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Research Products
(3 results)