2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K19842
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
市橋 成夫 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60597102)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内皮細胞 / 薬剤溶出ステント / 内膜過形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会の到来に伴い動脈硬化性疾患が急増している。我々はこれまで腸骨動脈や浅大腿動脈の閉塞動脈硬化症に対して積極的に低侵襲治療である血管内治療 (endovascular treatment: EVT)を取り入れ、治療成績の向上を目指してきた。ステント留置により、バルーン拡張術に比較して良好な初期成績が得られたが、晩期での内膜過形成によりステント内再狭窄がEVTの最大の問題となっていた。治療直後の血栓閉塞や慢性期での内膜過形成が抑制されることを期待し、我々はステント内腔側表面が内皮細胞層に完全に被覆された金属ステント バイオステントの開発を行ってきた。ヒトの臍帯から際静脈と動脈を分離し、臍静脈から内皮細胞を分離培養した。内皮細胞の増殖を待って、金属ステントのカバー作成を行う。金属ステントをシリコンチューブの中に挿入し、ステント内部には金属棒を挿入、シリコンチューブと金属棒の間隙にフィブリンゲルを注入する。30分後にフィブリンが重合されたのを確認した後に金属棒を除去し、フィブリンで作成されたカバー付き金属ステントの内部に内皮細胞を注入し、二日間static conditionにて内皮細胞のフィブリン膜への生着と増殖を促す。その後動脈循環を模したシステムの中で二日間の条件付けを行い、内皮細胞機能の増加と動脈循環への抵抗性を獲得させる。二日間の条件付けにより、金属ステント内腔に被覆されたフィブリン膜へconfluentな内皮細胞層の確立に成功した。今回さらに薬剤溶出ステントにも同様の内皮化を達成するために、フィブリンゲル注入システムと注入内皮細胞数の最適化を行った。注入細胞数は薬剤が塗布されていない金属ステントと同数で良いことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ステント留置後慢性期に生じるステント内再狭窄は主に血管内皮下の平滑筋細胞の増殖に伴う内膜過形成が原因とされている。今回細胞増殖を抑える目的でパクリタキセルが塗布された薬剤溶出ステントを用いて、バイオステントを作成した。フィブリン膜内腔側表面にヒト臍静脈から得た内皮細胞層を生着、増殖させようとしたが、二日間の培養ののち、内皮細胞層の減少が見られた。原因としてはパクリタキセルがフィブリン膜内に浸透し、内皮細胞に暴露されたため、内皮細胞傷害を生じた可能性を疑っている。現在パクリタキセルの内皮細胞への暴露を軽減させるよう、フィブリン膜の厚みを最適化している過程である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはフィブリン膜の厚みの最適化を達成し、薬剤溶出ステント上での内皮細胞層の確立を達成する。ただし厚みを増しすぎると、内腔径が縮小して血栓閉塞を生じやすくなることが予想される。また内腔径の減少により、in-vitroの動脈循環モデルで細胞の条件付けを行う際に内腔のshear stressが上昇しすぎるため、逆に内皮細胞傷害を生じる可能性も予想される。循環の適正化を行う必要がある。フィブリン膜の適正化が得られない場合にはパクリタキセルが浸透しないような代替の人工膜を使用し、その表面への内皮化を試みる。
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Causes of Carryover |
薬剤溶出ステントを5本購入予定であったが、滅菌切れの薬剤溶出ステントの無償提供があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬剤溶出ステント上への内皮細胞層の確立のため、薬剤溶出ステントの追加購入に使用する予定である。またフィブリンゲルの購入にも充てる。フィブリン膜の最適化による内皮細胞層確立が困難な場合には、人工膜の購入も検討する。
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