2016 Fiscal Year Research-status Report
放射線治療と血漿中腫瘍由来DNAを組み合わせた新規癌診断法の確立
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16K19856
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
影山 俊一郎 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (60644979)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線治療 / cell free DNA / エクソームシークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの実績として、本研究の核となる放射線治療後のcell free DNAを確認するために必要な前向き観察研究「放射線治療後のcell free DNA増加を利用した癌診断、薬剤感受診断法の確立」を開始、検体回収まで2016年度までに終了している。これにより、放射線治療前、治療中、治療後のcell free DNA動態の詳細なデータが得ることが可能な、他の研究では得ることのできない重要な検体を確保することができ、現在この検体を用いた解析を行っている。 前年度までにDNA抽出方法の検討、digital PCR解析、target sequence解析までは実験手法として確立しており、今後はエキソン、フルゲノムレベルでのシークエンス解析を行っている。放射線によりcell free DNA、腫瘍変異のallele frequencyを増加させることでより広範なシークエンス解析が可能であることが示されている。 digital PCR解析、target sequence解析の結果は、今後保険適応が予定されているcell free DNA解析に有用となるデータであり、臨床応用が期待される。これらの結果についてはこれまでに第16回癌治療増感研究シンポジウムにて発表しており、現在Scientific reports誌に投稿中、revise中であり、公開、応用の直前である。 エキソーム解析についてはシークエンスは6例終了、解析は2例終了の段階であり、解析が終わり次第、学会、学術誌での発表を行い、社会に還元していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の予定として初年度研究では新規臨床試験立ち上げ、NCC oncopanel解析ないしエキソームシークエンス解析を予定した。一方で申請者は2016年より国立がん研究センターに移動し、移動先施設では新規臨床試験の申請、承認まで半年以上の期間がかかること、臨床試験に患者侵襲が伴うこと、シークエンス解析の感度が上がり、2015年度の臨床検体の残血清でさらなる解析が可能になったことから今回新たな臨床試験検体でなく、前回のdigital PCR解析を行った検体を用いてエキソーム解析の検討を行っている。これまでにillumina Hiseq Xを用いたシークエンス解析行い、放射線照射後の検体6/17検体で配列情報を得ている。現在 basespace ならびにvariant studioを用いて変異のcall、解析を行っている。現時点で解析終了の2検体ではおよそ×100のdepthでのシークエンス解析で5%程度のallele frequencyで癌由来変異の解析が可能であり、放射線照射後のcell free DNA解析がエキソーム解析レベルでも可能であることが明らかとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に残りの検体11/17検体について引き続きHiseqXを用いたシークエンスを行い、basespace, variant studioによる解析を行う。 また、これまで得られた検体のうち、EGFR変異陽性、TKI投与済み、新規能転移出現例におけるTKI耐性遺伝子に焦点を当てて解析を行う予定である。治療中における薬剤耐性出現とそれに対応した分子標的薬の開発は最も研究が盛んな分野であること、一方で脳転移などrebiopsyが困難な部位に対する放射線治療、遺伝子型の診断は非常に意義の高い分野であり、臨床応用が最も期待できる。 第二として、エキソーム解析により、ROS、ret, ALKといったfusion遺伝子の検出についても検討を行う。ドライバー遺伝子かつ、標的薬が存在する上記の変異は検出の意義が非常に高い、一方でcell free DNA解析でのfusion遺伝子の検出は困難であることが報告されている。このような変異検出においても、放射線照射により腫瘍由来のcell free DNAを効率よく検出できれば診断に貢献できると考えており、エキソームシークエンス後、高精度で検出可能なアルゴリズムの作成を進めていく。 第三として、放射線による擬陽性変異の検証を行う。放射線照射は一定割合で遺伝子変異を引き起こすため、放射線照射後の体細胞変異について擬陽性の可能性が否定できない。現在投稿中の論文でもこの点が議論となっており、今後シークエンス解析の陰性標準との比較を行い、放射線による変異助長が低頻度であることを証明する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた新規臨床研究の立ち上げが遅れ、初年度に予定していたシークエンス解析が次年度に持ち越したため初年度の私用金額が予定よりも少なくなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
検体の確保が終了し、2017年5月現在で予定してたシークエンス解析を既に始めているため、予定に比べ、4ヶ月程度の遅れで研究は遂行できており、これ以上の修正は必要ないと考えている。
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