2016 Fiscal Year Research-status Report
核医学的手法を用いた膵外作用指向型新規GLP-1アナログの開発
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16K19880
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
近藤 直哉 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (80756172)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | GLP-1 / 核医学イメージング / 前立腺がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、膵臓以外に発現するグルカゴン様ペプチド受容体(GLP-1R)を標的とした新規核医学イメージングプローブを開発し、GLP-1R作動薬の膵外作用の詳細解明を目的とし、イメージングにより得た情報を基にGLP-1R作動薬の構造修飾を行い、膵臓以外へのGLP-1Rへの送達性を高め、より強い膵外作用を有する新規誘導体開発を最終目標としている。 初年度の目標として、① GLP-1R作動薬エキセナチドの動態の放射性同位元素標識による詳細な追跡、②膵外作用評価に用いるモデル動物の作製、③膵外作用を向上させる新規薬剤設計を掲げた。 上記について、今年度の研究において、(a) 39残基のペプチドであるエキセナチドを固相合成法による高純度合成に成功し、研究遂行上の技術基盤を確立した。 (b) (a)のペプチドについてシステインを導入する修飾法により、放射標識前駆体となる誘導体を新規に設計・合成した。 (c) (b)で設計した前駆体に125I-IPMを導入することで新規核医学イメージングプローブ125I-Ex4を新規開発した。 (d) 125I-Ex4の体内動態についてマウスを用いてインビボ評価し、125I-Ex4のGLP-1R発現組織である膵臓への高い集積性を示した。 (e) 膵外作用評価用モデル動物に前立腺がんを選択し、前立腺がん移植モデル動物を作製した。 (f) 125I-Ex4についてGLP-1R発現細胞を用いた取り込み評価を行い、陽性細胞への高い取り込みを確認した。 (g) エキセナチドのC末端側の伸長により親和性の向上が示唆される論文を参考に新規プローブの構造を設計した。 本年度開発した125I-Ex4はGLP-1R作動薬の膵外作用評価用プローブとして有効であると考えられ、GLP-1R作動薬に関連する今後の診断・治療領域の医療に貢献できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の今年度の進捗について計画段階においては、① GLP-1R作動薬エキセナチドの動態の放射性同位元素標識による詳細な追跡、② 膵外作用評価に用いるモデル動物の作製、③ 膵外作用を向上させる新規薬剤設計を掲げており、 ①の放射性同位元素による標識体プローブに関しては、GLP-1R作動薬エキセナチドの合成法の確立(Fmoc合成法)、標識前駆体の設計、N-(m-[125I]iodophenyl)maleimide(125I-IPM)を用いた125I-Ex4の合成から、正常動物を用いたインビボ評価まで実施済みであり、125I-Ex4の膵臓内のGLP-1Rへの親和性を証明できている。 ②のモデル動物に関しては、当初アルツハイマー病や動脈硬化を疾患の対象として考えていたが、正常動物におけるエキセナチドの体内動態を評価したところ、疾患部位である脳や血管への移行量が当初考えていたよりも極めて低く、多少の構造変化では対応出来ないと考えたため、初年度、及び次年度に用いるモデル動物として、GLP-1R作動薬による治療効果が考えられる前立腺がんを代替疾患として採用した。がんについての研究は今後進捗すると考えられるが、脳や血管疾患に関しての研究は遅延する可能性がある。 ③について、疾患へより高効率に移行する新規誘導体の開発を鑑み、エキセナチドのC末端側にアミノ酸を伸長することにより、さらにGLP-1Rへの親和性が向上すると示唆される報告を参考にして、新たな誘導体の構造を設計済みである。 以上を総合すると、研究課題の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、GLP-1Rをインビボで捉えることのできる新規の核医学イメージングプローブ125I-Ex4を開発でき、その有効性を正常動物、前立腺がん細胞を用いた実験により証明しているため、まずは、前立腺がんにおけるGLP-1R発現をターゲットとした研究を進めたい。すなわち、前立腺がん細胞を移植した動物を用いた、より詳細なインビボ実験を行い、SPECTイメージングなど画像評価を行うことで、現時点でのプローブの到達点・問題点を洗い出す。 上記においては、インビボ画像解析法や、エクスビボでの染色法、オートラジオグラフィーなどの手技を組み合わせ、GLP-1R作動薬の詳細解析に繋がるデータの蓄積を行う。 また、治療用量の投与による前立腺がんの治療実験についても、集積データから判断して適宜進めていきたい。 一方で、初年度の研究において中断している、アルツハイマー病や動脈硬化症を対象とした研究も進捗させる目的で、脳や血管への移行性が向上するような分子設計について、報告されている様々な手法を取り入れプローブの最適化を検討したい。 上記実験と並行して、よりGLP-1Rに高い認識能を示すプローブ開発についても進めていきたい。プローブ開発には、アミノ酸伸長やアミノ酸の環状化、近年注目されているNative Chemical Ligation などの先端的な手法を取り入れ、がんに発現するGLP-1Rへの高集積性、ひいては高い治療効果を示す新規誘導体の開発に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に使用を予定していた放射性同位元素(125I)の購入について、メーカー側(パーキンエルマー)の供給不具合が生じ、年度末に及ぶまで約3ヶ月間125Iの購入が不可能な状態であった。そのため、放射性同位元素及び放射性同位元素を用いる標識実験が延期となり、それらに係る費用について未消化となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未消化となった放射性同位元素購入分については、供給再開の目処が経った次年度において予定通り注文することで、放射性同位元素を用いる標識実験の試薬の購入を含めて消化する。それ以外の物品については当初予定通り使用するため、必要予定経費の変更は生じない。
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