2016 Fiscal Year Research-status Report
慢性拒絶反応における血管平滑筋細胞に対する制御性T細胞の効果の検討
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16K19884
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
財津 雅昭 北海道大学, 医学研究科, 客員研究員 (20768981)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / 慢性拒絶反応 / 血管平滑筋 / ヒト化マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性拒絶反応はグラフトの血管が徐々に閉塞をきたしグラフト機能不全に至る進行性の病態である。その機序は、アロ免疫応答により血管内皮細胞が障害を受け、その修復過程において血管平滑筋細胞が血管内腔に遊走し細胞外マトリックスを分泌および血管平滑筋細胞が集積することを繰り返していくことで、最終的にグラフト血管内腔狭窄に至るとされており移植後動脈硬化症とも呼ばれている。アロ免疫応答を抑制することでグラフト血管内腔狭窄を軽減できることは動物実験で証明されてきたが、実際に臨床においては免疫抑制治療下でも慢性拒絶反応は進行する。免疫抑制療法の発達とともに各臓器の短期グラフト生着率は改善しているが、長期グラフト生着率に改善がないことからも、拒絶反応の抑制だけでは不十分と考えられる。一方、制御性T細胞は免疫応答を抑制することが確認され自己免疫疾患や移植後の患者に対して細胞治療としての期待が高まっている。本研究は未解決問題である慢性拒絶反応に対する治療法の確立を目指して、制御性T細胞が血管平滑筋細胞に与える直接効果を明らかにし臨床応用へ繋げることが目的としている。血管平滑筋細胞に対する制御性T細胞の直接効果は不明であるため、制御性T細胞の血管平滑筋細胞に対する増殖抑制効果をin vivoで評価するモデルが必要である。まず、免疫応答がない移植後動脈硬化モデルの作成が必要であり、免疫不全マウスNOD/SCID IL-2Rg null(NSGマウス)を用いてヒト血管移植を移植するモデルの確立を行ってきた。ヒト血管は結腸の辺縁動脈を用いて移植した。現在、このモデルを用いて相当数の移植を行ってきたが、内胸動脈穿通枝を用いたモデルで可能だったのに関わらず、遅発性の血栓症を来すためモデル確立に至れていない。阻血時間の短縮を最大限試みたがモデルの完成にいたらなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新しくチャレンジしたことして、1)ヒトリンパ球再構築がしやすい免疫不全マウスNOD/SCID IL-2Rg null(NSGマウス)を用いること、および2)結腸の辺縁動脈を用いて血管移植を行ったことが挙げられる。NSGマウスはヒトリンパ球の再構築が行いやすく、細胞移植治療するモデルには最適と判断した。また、当科で手術後にヒト血管を入手しやすい結腸の辺縁動脈を採取することでヒト血管の採取のハードルを下げれると考えいた。現在のところ、成功例がなく、原因の究明にいたれていないが、癌治療において、中枢の動脈血流が遮断されることで、辺縁動脈の血管内皮細胞へのダメージが出ている可能性があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト血管の採取のための手術手技の変更は不可能であること、また、新たに内胸動脈穿通枝を用いた倫理申請には時間を要するので、ヒト化モデルに固執せずマウスの再移植モデルを用いてマウスモデルで研究を進める方向へ方針を転換する。
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Causes of Carryover |
ヒト化マウスモデルが完成しないため、モデル完成後に行う実験が行えなかった。また、結果がでてないため発表にいたらず旅費等の使用はしなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒト化マウスモデルとは別に、マウスの再移植モデルを用いて実験を行っていく予定。ヒト細胞でなくマウス細胞を用いて研究を進める必要があるため、新たに抗マウス抗体の購入にあてて実験を行っていく。
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