2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K19905
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
セドキーナ アンナ 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 研究技術員 (80626698)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子標的治療 / NF-kBシグナリング / 乳癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌は遺伝子発現パターンにより四つの亜型に分類された。このなかでbasal-like乳癌とher2-enriched乳癌が最も予後不良である。ハーセプチンという効果的治療方法を得たher2-enriched乳癌に比べ、basal-like乳癌は治療方法も限られ効果的治療の開発が待たれる。家族性乳癌の原因遺伝子BRCA1に変異があると80%の確率で乳癌、40%の確率で卵巣癌になる。さらにBRCA1変異を伴う乳癌はbasal-like乳癌との関連が大きい。近年の報告でBRCA1変異、または機能不全細胞でNF-kB経路の亢進が見られることが報告された。本研究はBRCA1機能不全、および機能が正常な細胞を複数の細胞株を用い作成し、実際にBRCA1機能不全細胞でNF-kB経路の亢進が見られるのか、そしてBRCA1機能不全細胞がNF-kB inhibitorに高い感受性を示すか検討するものである。 BRCA1機能不全細胞はBRCA1遺伝子に変異のある乳癌、および卵巣癌細胞株に野生型BRCA1を安定的に発現する株を樹立する方法と、BRCA1遺伝子が正常な細胞株にRNA interferenceを用いBRCA1発現量を低下させBRCA1機能不全をおこすといった二つの方法で行った。これらの細胞株を用いBRCA1機能不全でNF-kB経路が亢進することを確認した。さらにBRCA1機能不全細胞がNF-kB inhibitorに高い感受性を示すことも確認した。 本研究はprecision oncologyに基づく新規治療方法提案という意味で重要である。今後はこれまでの実験結果の再現性を確認するだけでなく、bioinformaticsを用いた客観性のある実験でも再現性を確認していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BRCA1機能不全細胞はBRCA1遺伝子に変異のある乳癌細胞株HCC1937に野生型BRCA1を安定的に発現する細胞株を作成した。BRCA1は220kDaと非常に大きい蛋白質をコードする遺伝子であり安定発現株の作成に苦慮したが、共同研究者のDr. Juan BernalがPiggyBac system用コンストラクトを作成し無事に細胞株樹立ができた。BRCA1遺伝子に変異を伴う卵巣癌細胞株であるUWB1.289は野生型BRCA1を安定的に発現する細胞が購入可能であり入手した。RNA interferenceを用いたBRCA1ノックダウンはウエスタンブロッドで蛋白発現量の低下を確認した。 細胞の準備ができたためNF-kB経路の亢進を確認した。これは転写因子p65の局在で判断することとした。客観的な結果を得るために、p65の局在はオートメーション顕微鏡であるcellomicsで計測した。これによりBRCA1機能不全を伴う細胞ではNF-kB経路の亢進を伴うことが確認できた。 NF-kB inhibitorに対する感受性はBRCA1機能不全細胞と機能が正常な細胞に異なる濃度のNF-kB inhibitorを投与しclonogenic assayで確認した。この実験によりBRCA1機能不全細胞はNF-kB inhibitorに高い感受性を示すことを確認した。 このように当初の計画通りに研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の癌治療においてprecision oncology、またはoncogene-driven cancer therapyといった癌細胞特有の経路亢進を特定し、その阻害薬による癌細胞選択的細胞死の誘導といった治療が注目されている。本研究はprecision oncologyに基づく新規治療方法提案という意味で重要であるが、今後の臨床応用のためにはより客観性のあるデータが求められる。特定の細胞株を用いた実験や外来性の遺伝子発現亢進、または遺伝子発現低下などは生理的現象ではなく客観性にも乏しい。すでに蓄積された癌患者の遺伝子発現や変異とその患者の生存期間などを含むデータセットが入手できる時代である。申請者はこのbioinformaticsによる解析を行っている。 BRCA1機能異常でNF-kB経路が亢進するかデータセットを用いたbioinformaticsで解析することで客観性のある解析が可能になる。この解析は可能なかぎり多くのデータセットで行う予定である。 BRCA1機能不全細胞のNF-kB inhibitorに対する感受性に関してもbioinformaticsは有用である。700種類ほどの細胞株の遺伝子発現情報と遺伝子変異情報、さらに薬剤感受性情報がまとまったデータセットが入手可能である。このデータセットを用いBRCA1機能不全細胞とNF-kB inhibitorに対する感受性に関し客観的に解析する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究が予想以上に進行し、本年度途中からbioinformaticsで客観性のある再現性検討を行うこととなった。bioinformaticsの検討自体には研究費がかからないため本年度の研究費の使用は保留とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Bioinformaticsは客観性の確認だけが目的でない。BRCA1機能不全がNF-kB経路の亢進以外にどのような経路に異常をきたすか、NF-kB inhibitor以外の効果的治療方法はないか、などの検討も可能である。このようにbioinformaticsから得られた結果の再現性を今度は基礎実験で確認する必要がある。このように来年度はもともと予定されていた以上に実験が必要となるため、本年度分の研究費を充てる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 合成致死を多くの予後不良癌へ2016
Author(s)
セドキーナアンナ 佐藤工
Organizer
第75回日本癌学会学術総会
Place of Presentation
パシフィコ横浜(神奈川県、横浜市)
Year and Date
2016-10-06 – 2016-10-08
Int'l Joint Research