2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K19918
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩本 哲好 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (80769422)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | .KRAS遺伝子 / アスパラギン合成酵素 / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はKRAS遺伝子変異による大腸癌のアミノ酸代謝変化、特にASNS(アスパラギン合成酵素)の変化に着目し、新規治療法の開発を目的としているものである。 大腸癌細胞においてASNSの発現はPI3K阻害剤(LY294002)とmTOR阻害剤(Rapamycin)により抑制されたことから、ASNSの発現制御にはPI3K-mTOR経路が関与していることが示唆された。さらに、原発巣切除された結腸直腸癌93症例について、免疫組織染色法でKRAS遺伝子とASNS発現の関連について検討したところ、KRAS遺伝子変異症例ではASNS陽性率が有意に高いことが明らかとなった。 ASNSの機能解析のためKRAS変異型細胞株(HCT116)のASNSをノックダウンした細胞株を樹立しマウス皮下腫瘍モデルで検討したところ、ノックダウン細胞株では腫瘍増殖速度が有意に抑制され、Ki-67陽性細胞数も減少していた。またin vitro実験において、ASNSの発現を抑制するとグルタミン欠乏条件下での細胞増殖が抑制されアポトーシスが誘導された。さらにこれらの表現型は、アスパラギンを培地に添加したり、抑制されたASNS発現を強制発現系ベクターで回復させると元に戻ることが確認された。 さらにASNS発現を抑制するRapamycinとL-Asparaginaseとの併用療法では、in vitro、in vivoいずれの実験においてもKRAS変異型細胞株の腫瘍増殖が有意に抑制された。 この結果は、論文として発表した(Toda et al. Neoplasia. 2016)。 本研究により、KRAS遺伝子変異を有するヒト大腸癌細胞はASNSの高発現を介してグルタミン欠乏に対する耐性を獲得していることが明らかとなり、さらなる解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに実験計画が進んでおり、現在まで得られた実験結果は論文発表することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸癌細胞で確認された解析結果をふまえ、臨床検体から樹立したスフェロイドで検証し、ASNS(アスパラギン合成酵素)の抑制が腫瘍増殖抑制に有効であるかを検討していく予定である。また、スフェロイドでASNS阻害が有効であることが確認できれば、実際に臨床応用を目指したASNS阻害剤の開発に研究を発展していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
若干の端数が生じた為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算とと合わせて使用予定である。
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