2016 Fiscal Year Research-status Report
DNAミスマッチ修復異常大腸癌における免疫寛容誘導メカニズムの解明
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16K19934
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中西 良太 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 特任助教 (90771254)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 免疫寛容 / PD-L1 / マイクロサテライト不安定性 / CD-8 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌における免疫寛容の機序の解明を目指し、PD-L1発現の意義と局在の検討について検討した。具体的には、免疫療法のターゲット因子であるPD-L1、細胞障害性T細胞のマーカーであるCD8、マクロファージマーカーであるCD68のそれぞれの発現と局在を、マイクロサテライト不安定性の有無に分けて、大腸癌499例について検討した。高度のマイクロサテライト不安定性を示す(MSI-H)症例では、マイクロサテライト不安定性を認めない症例と比較して、腫瘍細胞と腫瘍の間質においてPD-L1が高発現していた。さらにMSI-H症例のうち、腫瘍細胞にPD-L1が高発現している症例は低分化型腺癌、脈管侵襲を示す症例が多かった。間質にPD-L1が高発現している症例はStageI/IIが多く、StageIII/IV症例が少なかった。MSI-H症例では、概して腫瘍より腫瘍先進部の正常組織の間質にPD-L1、CD8、CD68が高発現していた。蛍光免疫染色にて、MSI-H症例の腫瘍先進部の正常組織の間質においてPD-L1陽性細胞は、その多くがCD68陽性細胞であった。以上の検討により、MSI-H大腸癌では、腫瘍先進部の正常組織の間質に存在するマクロファージが免疫寛容に関わっていることが示唆された。さらに腫瘍先進部の正常組織の間質のみでなく、腫瘍内部の免疫チェックポイント分子の発現も免疫寛容や腫瘍の進展に関わっている可能性が示唆された。以上の結果を第27回日本消化器癌発生学会総会で発表した。また、抗PD-1抗体薬の高い有用性が報告された食道扁平上皮癌においても腫瘍免疫回避機構の機序を明らかにする目的でPD-L1の発現と癌の進展様式の一つである上皮間葉移行との関係を解析した。腫瘍先進部でのPD-L1発現と上皮間葉移行誘導因子ZEB-1が共同して悪性度に関与する可能性が示唆され、第71回消化器外科学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画は、①免疫組織化学染色を用いた臨床検体におけるミスマッチ修復因子の評価。マイクロサテライト不安定性との比較検討 、また②免疫組織化学染色を用いて各種免疫チェックポイントタンパク質の発現・誘導・局在を評価、ミスマッチ修復因子の状態を含む臨床病理学的因子との比較検討を行うこと、であった。①についてはミスマッチ修復因子の発現を大腸癌約250症例について検討した。具体的にはMLH-1、MSH2の発現を免疫組織化学染色にて検討した。実際に大腸がんにおける免疫チェックポイント因子PD-L1の発現の検討はマイクロサテライト不安定性の有無にて検討した。ミスマッチ修復因子を欠損している症例は高度のマイクロサテライト不安定性を示す症例が優位に多かった。②については、上記研究実績の概要の通り、免疫療法のターゲット因子であるPD-L1、細胞障害性T細胞のマーカーであるCD8、マクロファージマーカーであるCD68のそれぞれの発現と局在を、マイクロサテライト不安定性の有無に分けて、大腸癌499例について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究計画は①臨床検体で得られた知見を細胞株を用いて検証する。RT-PCRおよびWestern Blotting法を用いて免疫チェックポイント因子の発現とミスマッチ修復機構の関係を解析すること、②大腸癌細胞株を用いて、DNA修復因子の発現を変化させ、免疫チェックポイント因子の発現の変化を解析することで、ミスマッチ修復欠損大腸癌における免疫チェックポイントタンパク誘導のメカニズムを解明することである。現時点で示唆されていることは、MSI-H大腸癌では、腫瘍先進部の正常組織の間質に存在するマクロファージが免疫寛容に関わっていること、また腫瘍先進部の正常組織の間質のみでなく、腫瘍内部の免疫チェックポイント分子の発現も免疫寛容や腫瘍の進展に関わっていることである。また食道がんにおいて腫瘍先進部でのPD-L1発現と上皮間葉移行誘導因子ZEB-1が共同して悪性度に関与することである。食道扁平上皮癌においては、腫瘍先進部でのPD-L1陽性症例はリンパ節転移陽性例や脈管侵襲陽性、上皮間葉移行誘導因子ZEB-1高発現症例が多く、また予後不良因子でもあった。大腸癌においては、大腸癌細胞株を用いてsiRNAを用いて免疫チェックポイント因子の発現の変化を検討する予定である。また食道癌においても食道扁平上皮癌細胞株を用いてsiZEB-1により免疫チェックポイント因子の発現の変化を検討する予定である。
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