2016 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌におけるスタチンによる抗腫瘍効果の分子メカニズムの検討
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16K19940
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
東 孝暁 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (70594878)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スタチン / 肝細胞癌 / 薬剤感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞癌は、C 型肝炎、B 型肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などによる線維化を伴う背景肝より発症する疾患であるが、その発癌・進展に関わるメカニズムは不明な点が多い。本研究では特にNASH、NAFLD 症例を中心とし、肝細胞癌の発癌リスクや予後不良に関わるバイオマーカーを同定するとともに、予後を改善する可能性のある薬剤(特にスタチン)を検索することを目的とする。ウイルス性肝炎に対する発癌予防は抗ウイルス治療の発展により効果が得られているが、NAFLD/NASH 肝癌に対する発癌予防を目的とした治療法は未だ開発段階であり本研究が果たす役割は大きいものと考える。 我々は、米国のMount Sinai 医科大学の星田Lab との共同研究で、肝細胞癌の切除標本を提供している。臨床検体を用いたDNA マイクロアレイによる遺伝子解析を行い、発癌リスクや予後不良に関わるバイオマーカーを同定した。これらを用いた肝細胞癌の発癌・予後・治療効果の予測を行うワールドワイドなデータベースを作成し、臨床応用することを目標としてきた。近年欧米諸国を中心に肥満やメタボリックシンドロームに伴うNAFLD、及びNASH より発症する肝細胞癌が増加しており、日本においても今後増加することが予想される。我々は主にC 型肝炎より発症した肝細胞癌術後の再発・予後を予測するPrognostic gene signature (186-gene signature)を提唱し 、現在臨床応用へ向けた取り組みを行っているが、NAFLD およびNASH においても適応可能かどうかその有用性は明らかでは無い。 今研究では、高脂血症治療薬であるスタチンの抗腫瘍効果を検討するとともに、薬剤感受性に関わるPathwayの同定を行うことを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)NAFLD,NASH における186-gene signature の有用性の確認 肝癌リスク遺伝子シグネチャーをより臨床適用しやすくなるように、まずは186遺伝子から32遺伝子に限定し、263例のB/C型肝炎、飲酒、脂肪肝による肝癌治癒切除症例の独立コホートにおいて検証を行った。肝癌リスク遺伝子シグネチャーにより、57例(22%)、148例(56%)、58例 (22%)がそれぞれ高、中、低リスク群に分類され、新規再発および全死亡に有意に相関していた(p<0.001)。遺伝子シグネチャーの予後との相関は、各病因、病期においても有意であった。 2)スタチンによる肝細胞癌細胞株の増殖抑制効果の検討 2種類の肝細胞癌細胞株を使用し、4種類のスタチンによる抗腫瘍効果を検討するとともに、Hippo pathwayとの関連を検証した。SimbastatinおよびFluvastatinは間葉系の性質をもつHLF,HLE細胞株の増殖を有意に抑制した。また同スタチン添加にてHippo pathwayの下流に局在するYAP/TAZ(特にTAZ)の発現が著明に抑制されていた
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Strategy for Future Research Activity |
1)NAFLD,NASH の予後を予測する新たなgene signature を解析、同定し、そのターゲット遺伝子、活性化しているpathway を抑制する薬剤のスクリーニングを行う。NAFLD,NASH から発症した肝細胞癌症例(肝生検検体を使用)を用いて、スタチンを含む種々の薬剤で体外培養を行い、gene expression pattern の変化を確認する(ex vivo)。 2)共同研究を行っている米国(Mount Sinai 医科大学、MGH Cancer Center)、日本(熊本大学、虎ノ門病院、広島大学、東京大学)の施設から肝生検サンプルを集積する。RNA、DNA を抽出しgene expression を確認すると共に、種々のコホートで同定されたgene signatureが有用であるか検証する。 3)同定された遺伝子学的な特性と糖代謝、肥満(BMI、内臓脂肪量)、などの他の臨床因子との関係を研究すると共に、多変量解析を行い、予後予測因子としての有用性を比較・検討する。
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Causes of Carryover |
医局内保管の試薬、消耗品をしようすることが出来たため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
NAFLD,NASH の予後を予測する新たなgene signature の解析、同定や、スタチンを含む種々の薬剤で体外培養を行い、gene expression pattern の変化を確認するため、多くの試薬、消耗品をしようする予定である。また、共同研究を行っている米国への研究打ち合わせのための旅費、実験データの管理にかかる事務補佐員の雇用経費にも充てたいと考える。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Molecular Liver Cancer Prevention in Cirrhosis by Organ Transcriptome Analysis and Lysophosphatidic Acid Pathway Inhibition.2016
Author(s)
Nakagawa S, Wei L, Song WM, Higashi T, Hoshida H, Erstad DJ, Gunasekaran G, Lee Y, Yu ML, Chuang WL, Dai CY, Kobayashi M, Kumada H, Beppu T, Baba H, Mahajan M, Nair VD, Lanuti M15, Villanueva A, Sangiovanni A, Iavarone M, Colombo M, Llovet JM, Subramanian A, Tager AM, Friedman SL, Baumert TF, Hoshida Y, et al.
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Journal Title
Cancer cell.
Volume: 30(6)
Pages: 879-890
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Statin attenuates cell proliferative ability via TAZ (WWTR1) in hepatocellular carcinoma.2016
Author(s)
Higashi T, Hayashi H, Kitano Y, Yamamura K, Kaida T, Arima K, Taki K, Nakagawa S, Okabe H, Nitta H, Imai K, Hashimoto D, Chikamoto A, Beppu T, Baba H
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Journal Title
Medical oncology
Volume: 33(11)
Pages: 123
DOI
Peer Reviewed