2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K19958
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
佐藤 純人 昭和大学, 医学部, 兼任講師 (80769315)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラマン分光 / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラマン分光法は、試料に励起光を照射した際に生じる散乱光を用いた分光法で、この手法を用いて、癌組織と正常組織との識別が可能となれば、治療法や切除範囲の決定の際の有用な手術支援デバイスとなり得る。大腸癌の手術検体を用いて、同手法が迅速性、客観性、簡便性に優れた低侵襲な診断技術となり得る可能性について検証した。 昭和大学藤が丘病院 消化器一般外科において施行された進行大腸癌手術12例を対象に,1064nmの近赤外励起光を用いたラマン分光法にて,正常腸管組織40か所と大腸癌組織36か所を測定した。生体試料を用いた実験を繰り返すことで、安定したラマンスペクトルを検出可能となった。またレーザーの照射部位の組織の安全性も再度確認した。得られたラマンスペクトルの形状は,再現性を認め信頼性を確認できた。正常組織と癌組織を判別する方法としては、主成分分析を用いることとした。得られたスペクトルを構成する主成分を分析し抽出し、その主成分の中で、判別分析に応用が可能である10種類の主成分を解析した。さらにその10種類の主成分を用いて、それぞれの試料から得られたラマンスペクトルが良性か悪性かを診断する判別分析を施行し,感度85.7% 特異度77.2% 精度 80.5%%で正常組織と癌組織とを判別可能であった。これらの内容を国内外の学術学会で報告するとともに論文作成を進めている。さらに大腸組織だけではなく、その周囲組織についてもラマンスペクトルをを測定し、適切なラマンスペクトルを検出するための、レーザーの焦点距離、出力、照射時間、照射回数などの検証を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラマン分光実験で得られた正常腸管組織と癌組織のラマンスペクトル結果を蓄積し、その測定結果の分析を進めた。主成分分析にてスペクトルの主成分を抽出し、それらを用い判別分析することで、正常組織と癌組織の鑑別が可能となったが、判別分析に応用が可能であるスペクトル内の主成分の解析に時間を要したため、大腸組織以外のラマンスペクトル結果の解析に遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに測定結果を蓄積し主成分分析による新たな主成分を分析し、正常組織と癌組織の判別解析の精度の改善に努め、同時に論文作成に従事する。また、大腸癌の早期癌と進行癌の深達度診断が可能がどうかも検討する予定である。大腸組織以外のラマンスペクトルも結果の蓄積が始まっており、分析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初に計上したラマン分光器使用料が低額に抑えられたことと、予定していた国際学会での発表が少なかったことにより生じた使用額差である。 (使用計画) 繰り越した助成金は、データの蓄積に必要なデバイスとさらなるデータの解析のために必要な解析用パソコンの購入に充てることで研究を推進したい。また最終年度として積極的な研究成果発表のために必要な経費として使用する計画である。
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