2016 Fiscal Year Research-status Report
自家静脈グラフトにおける弁部内膜肥厚発生メカニズムの解明
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16K19962
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
菊地 信介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80596297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内膜肥厚 / 静脈グラフト / 末梢動脈疾患 / 下肢動脈バイパス / 静脈弁 |
Outline of Annual Research Achievements |
静脈グラフトを用いた下肢動脈バイパスにおける内膜肥厚、特に弁部由来の内膜肥厚について、ヒト大伏在静脈から採取した静脈弁部由来細胞の誘導因子に対する応答を、同一患者の非弁部由来細胞と比較して検討した。組織培養では20%ウシ胎児血清下で、内皮および外膜、外膜周囲組織を除去した内膜中膜弁部静脈組織は、非弁部に比較して細胞遊走が有意に高く、両群に細胞死に差はないが(TUNEL染色)、Ki67染色では弁部で核陽性率が有意に高く、遊走の背景に細胞増殖能の有意な上昇も見られた。これら組織外遊走細胞を平滑筋細胞マーカーであるSMA及びMHCにより蛍光免疫染色したところ、両群細胞は平滑筋細胞(SMC)であった。細胞培養では、弁部SMCは非弁部SMCに比べて、PDGF-BB刺激による増殖能が有意に高く、遊走に関しても同様の結果であった。我々は過去に報告されたSMCにおける増殖能、遊走能とPDGF-FGFシステムの関与に着目し、弁部SMCのPDGFBB高度増殖・遊走応答のメカニズム解明のため、FGF2を阻害することによる弁部由来SMC応答を観察した。1)FGF2阻害により弁部由来SMCのPDGFBB増殖応答は抑制されたが、非弁部由来SMCに変化は見られなかった。2)一方でFGF2による刺激誘導により弁部由来SMCは有意に増殖能が上昇したが、非弁部由来SMCに変化はなかった。3)FGF2阻害下で組織培養を行ったところ、両群ともに遊走能は阻害されなかった。以上から、弁部由来SMCにはFGF2が関与していることが示唆された一方で、細胞培養と組織培養の傾向が必ずしも一致しないことがわかった。これらの知見は2017年にJournal of Vascular Surgeryに採択されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
11患者から得た弁部及び非弁部内膜中膜組織をペアでRNAシークエンスしたところ、弁部組織では37遺伝子が非弁部に比べ有意にその発現が異なり、その一遺伝子であるSEMA3Aの阻害下で組織培養を行ったところ、弁部組織からの細胞遊走が有意に増加し、非弁部では変化がなかった。細胞培養結果と組織培養結果の傾向が必ずしも一致しないことから、細胞培養から得たFGF2の関与と組織培養から得たSEMA3Aの関与が、どのようにリンクするか今後の課題である。
また獲得細胞に一部増殖能低下などの異常がでているため、改めて組織を得て細胞を取り直す必要があるかもしれない。その場合には平成29年度の研究計画に影響を与えるかもしれない。
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Strategy for Future Research Activity |
弁部SMCと非弁部SMCの遺伝子発現の違いを調査したい。 1)血管内皮細胞マーカー、血管平滑筋細胞マーカー、線維芽細胞マーカー、マクロファージ/単球系細胞マーカーに以下の実験で解析する。マーカーについてはCD31やα-SMA、MHC11、CD68などを候補としているが今後さらに検討する予定でいる。 2)炎症マーカー発現の確認:内膜肥厚に影響をおよぼすと考えられている炎症性マーカーについて各細胞群が機能的に違いを持つのか確認する。今のところIL-1β、IL-6、MCP-1、Serum-response factor(SRF)、KLF4などのmRNA発現確認を行う予定でいる。通常培養条件で、環境による炎症マーカーや細胞分化に違いがないようであれば、PDGF-BB刺激にて同様の実験を行う。 3)未分化細胞マーカーである Nanog、Myc、Sca-1、 c-kit、 CD34などの発現や、ペリサイトマーカーNG2、 RGS-5などの発現の違いをmRNAレベルで解析する。 FACSによる細胞分離も研究計画に入れているが、上記結果次第である。
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Research Products
(2 results)