2016 Fiscal Year Research-status Report
赤外線サーモグラフィを用いた肺区域間面同定法の確立
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16K19987
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
坂本 圭 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (50746873)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺区域切除 / サーモグラフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
肺区域切除において、肺区域間面を同定する方法はいくつか報告されているが、それぞれの方法に特有の限界があり、より簡便な方法の確立が求められている。 研究代表者らは予備実験において、肺切除術中に切除予定肺の血管(肺動脈、肺静脈)を切離することで切除肺の表面温度が低下することを確認している。この原理は肺区域切除術中の区域間面同定にも応用可能と考え、この温度差(=区域間面)をサーモグラフィカメラで同定できると想定した。 当該年度においては、サーモグラフィカメラ(Infrec R300SR-S、日本アビオニクス社)を購入し、その使用法に習熟するとともに、まずブタ肺の区域解剖を文献的、およびブタ摘出心肺を用いて検討し、適切な切除予定区域を設定した。その結果、ブタの左肺がヒト左肺と類似しており、上葉においてはヒトと同じ上区と舌区、下葉においてはS6に相当するD2, S8に相当するL2区域が実臨床に則しており適切と考えられた。また当初予定していた摘出心肺を用いたサーモグラフィでの予備的実験については、温生食を用いた還流、加温が困難であり施行せず、次年度に予定していた生体ブタでの実験を前倒しして開始することとした。 当該年度においては生体ブタを用いて計4回の区域切除を行った。その結果、ブタ肺左上区域切除については、肺動静脈切断後に区域間面がサーモグラフィカメラで観察可能であった。また下葉D2区域においては区域肺静脈を同定することが困難で、区域肺動脈のみの切断となったが、上区と同様に区域間面がサーモグラフィカメラで観察可能であった。これらの実験はすべて開胸下に行っており、次年度以降、他の区域切除で応用可能かどうか、また創を小さくしても区域間面が観察可能かどうか等、検討を進める予定である。また最も区域間面が明瞭に観察できるように、サーモグラフィの設定を最適化する検討も併せて進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに生体ブタでの実験を開始し、区域間面の描出には成功しており、概ね順調に進展している。また、予算的な問題から実験可能なブタの数は当初の予定よりも減る可能性が高いが、限られた実験回数の中でサーモグラフィを用いた肺区域切除の実現可能性については十分検討可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度については、さらに生体ブタを用いた実験を進め、以下の項目について検討を行いたい。①他の区域切除の際にも応用可能かどうか(L2区域等)。②開胸創を小さくした場合の区域間面観察の可能性、すなわちサーモグラフィ上区域間面同定可能な最小創径について(胸腔鏡下手術を念頭において)。③区域血管切断後の区域間面観察の最適なタイミングや区域間面を同定するために必要な条件(区域肺静脈切離が必ずしも必要かどうか)について。④将来的な臨床応用に向けた課題を明らかにする。
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Causes of Carryover |
生体ブタを用いた実験にかかる費用を多めに見積もって請求したが、実際は予測よりも安価に実験施行することができたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も引き続き生体ブタを用いた実験を予定しており、次年度使用額もそちらの実験費用に充てたい。
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