2016 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮障害による脳軟膜動脈側副血行発達障害の機序の解明と薬剤介入の検討
Project/Area Number |
16K20007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
由上 登志郎 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (50774189)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 側副血行 / 脳軟膜動脈吻合 / 血管内皮 / 脳虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血性脳血管障害において、脳側副血管の発達(arteriogenesis)は重要であり、側副血管の発達に対する介入は今後の有望な治療ターゲットと考えられる。一方、申請者らのこれまでの検討から、血管危険因子は脳側副血管の発達が障害される要因となる。実臨床において脳側副血管の発達が望まれるような患者は、血管内皮障害をきたす血管危険因子を有することがほとんどであり、血管内皮障害と脳軟膜動脈側副血行発達障害との関連を明らかにし、そのメカニズムを検討することが必要である。本研究の目的は、血管内皮障害による脳軟膜動脈側副血行発達障害の機序を明らかにし、血管リスクをもった状態でも脳側副血行の発達をうながすことが可能な薬剤介入を検討することである。 本研究では、血管内皮機能障害モデルマウスとして、eNOS(endothelial nitric oxide synthase)ノックアウトマウスを用いる。 本年度は、これまで申請者らのグループが確立した脳軟膜動脈側副血管発達が観察可能な動物実験モデルをeNOSノックアウトマウスにおいて用いることが可能か検討するために、eNOSノックアウトマウスでのウィリス動脈輪の構造がこれまで用いてきた正常マウス(C57BL/6)と同様かを検討した。その結果、正常マウスとeNOSノックアウトマウスでは、ウィリス動脈輪の構造に特記すべき違いはないことがわかった。 次に、通常マウスおよびeNOS ノックアウトマウスそれぞれを、総頸動脈閉塞術群とsham 術群に割り付け、14 日後に脳血管を可視化し、脳表面の脳軟膜動脈吻合血管の血管径を評価した。その結果、正常マウスでは一側総頸動脈閉塞後の脳軟膜表面でのarteriogenesisの促進がみられたが、eNOSノックアウトマウスではarteriogenesisの促進がみられない個体が観察されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
eNOSノックアウトマウスにおいて、これまでの申請者らのグループにおける実験モデルが使用可能なことはすでに確認できた。また、eNOSノックアウトマウスでは、脳軟膜動脈吻合のarteriogenesisが促進されない個体がみられることも確認できており、その点においては順調に進んでいる。しかし、eNOSノックアウトマウスの妊娠効率の悪さなどからくる繁殖面の停滞があり、当初の計画よりも必要な個体を確保することが難しいことが判明し、計画していた脳軟膜動脈側副血行発達過程における同血管周囲に集積するマクロファージの免疫組織学的検討など、まだ十分にに行えていない。 今後、繁殖ペースを増強し、必要な個体数を確保し実験を推進していく予定である。 上記を考え、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、eNOSノックアウトマウスの必要な個体数を確保することを推進するため、繁殖ケージを増加させる。そのうえで、eNOSノックアウトマウスにおける脳慢性低潅流に対する脳軟膜動脈吻合発達障害の検討を行い、脳血管arteriogenesis の過程における正常マウスとeNOSノックアウトマウスとの免疫組織的相違および遺伝子発現の相違を検討する。そして、血管内皮障害による脳血管arteriogenesis の障害を改善しうる薬剤を検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
マウス用無加温型非観血式血圧計の購入を計画していたが、現在のところ購入できていないことが次年度使用額が生じた主な理由である。また、eNOSノックアウトマウスの個体数の確保に遅れがあったことから、マイクロアレイ解析費やその他の実験の消耗品についても予定より使用できていないことも理由としてあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウス用無加温型非観血式血圧計は引き続き購入を検討する予定である。またマイクロアレイ解析も次年度に行う予定である。
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