2016 Fiscal Year Research-status Report
免疫組織化学を応用したMGMT methylation statusの評価
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16K20017
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
梅野 哲也 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (00737273)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪性神経膠腫 / MGMT |
Outline of Annual Research Achievements |
MGMTはその発現量が多いほどアルキル化抗癌剤に対する耐性を増す。しかし、その発現量を免疫組織化学やRT-qPCRで定量するなどの試みは実用に至らず、現在では MGMTプロモーターのメチル化の有無をpyrosequencingで評価するようになった。しかし、これを行える施設はごく一部であり、多くの施設では未評価のまま診療が行われているのが現状である。申請者はこれに代替する方法として、共同研究を行っている長崎大学大学院医歯薬学研究科第三解剖学教室の協力のもと、同教室で開発されたhisto endonuclease-linked detection of methylation sites of DNA(HELMET)法を応用しMGMTプロモーターのメチル化評価を行いたいと考えている。 本法は、標的とするDNAのプロモーター領域に存在するCpGを含む特定の塩基配列を認識するイソシゾマー性の制限酵素(これらは同一配列を認識して切断する2種類の制限酵素であるが、一方の制限酵素は非メチル化CpGのみを切断し、他方の制限酵素はメチル化・非メチル化に関係なくこれを切断する。)を組織切片上で連続的に作用させ切断部位を異なる核酸アナログで標識し分別的な染色を行うことでメチル化CpG断端を可視化し、標的とするDNAのメチル化を有する細胞の局在を証明する。そのため、まずは多数のMGMTプロモーターメチル化陽性症例のpyrosequencing解析結果から、標的となるCpGを含む塩基配列を選択する必要がある。現在は当教室に保管されているサンプルを用いてこれらの作業を行っており、既に候補となり得るCpG配列に対してHELMET法を適応し、pyrosequenceの結果との整合性の評価を行っている。また、これと同時に悪性神経膠腫症例を蓄積しそれらのMGMTプロモーターのメチル化データの蓄積を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HELMET陽性細胞の染色率による定量的・定性的評価法を確立していくことが本研究の最終的な目標であるが、計画当初の予定通り悪性神経膠腫症例は年間15例~10例ペースで蓄積されており、逐次pyrosequencingによりMGMTプロモータメチル化解析を行いサンプル収集は順調である。MGMTプロモータメチル化のHELMET法での定量方法の確立が問題であるが、過去のサンプルから候補に挙げたCpG配列についてHELMET染色を行いその再現性や臨床病歴及びpyrosequence結果との整合性の確認を行っているところである。また、本研究が当初計画の通り進まなくなる原因として最も可能性が高いと思われるのは、制限酵素に認識させるメチル化CpGを含む特定の塩基配列が、全DNA中にubiquitousに存在する場合である。この場合は細胞間でのシグナル強度に差が見いだせずメチル化DNAを検出できなくなる可能性がある。その場合はin situ PCR法(Hishikawa, Koji, et al. Saibou 33:196-199,2001.)によりDNAを増幅することでシグナル強度の差を作り出すことが可能であるが、その場合高度な手技とある程度の熟練を要するため実用的手法でなくなる可能性がでてくる。現時点ではそのような必要性はでてきていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当教室に保管されているサンプルを用いてHELMET染色を行い、診療録から患者の臨床データ(MGMTプロモーターメチル化の有無や治療内容・転帰など)と照らし合わせKaplan-Meier法などを用いて本手法の有用性を評価する。また、当教室において今後得られる臨床検体(年間約15例程度が期待される)は逐次pyrosequencing法でMGMTメチル化の有無を評価していき、同時に行うHELMET法での定量値との相関関係をprospectiveに評価し、これにより染色率による定量的または定性的評価方法(染色強度を段階的に分類しgradingを行う)を確立していく。 また、pyrosequencing法とHELMET法との最大の違いは空間解析能であり、本法は細胞レベルで特定のDNAメチル化の局在を証明することが出来る唯一の方法である。この特色を活かし、他の免疫組織学的手法を組み合わせ、新たな知見を模索する。一例としてアルキル化剤による抗腫瘍効果はapoptosisによるといわれているが、これを検証するためアルキル化剤治療後の組織標本の連続切片を用いて、TUNEL法と組み合わせることで、MGMTプロモーターメチル化陽性細胞でapoptosisがみられるかを検証する。症例集積は継続的に行っていくが平成30年を目途にデータの解析と論文作成を行う。
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Causes of Carryover |
本研究に関する予備実験の段階で必要となる試薬・物品は既に揃っており、昨年度はそれらを用いてMGMTプロモーターメチル化評価の基盤を作り上げている段階であった。そのため助成金を使用する必要はなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度以降に具体的なHELMET染色プロトコールが確立する予定であり、ある程度の成果が見込まれる。その際に試薬・物品等の購入及び学会発表や論文作成に必要となる経費に使用する予定。
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