2017 Fiscal Year Research-status Report
放射線脳障害に対する抗HMGB1抗体を用いた新規治療法の開発
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16K20032
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高垣 匡寿 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (70724433)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線脳障害 / HMGB1 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、転移性脳腫瘍患者の生命予後が延長してきており、脳腫瘍治療などに対する放射線治療が引き起こす高次機能障害などの遅発性有害事象が問題となっている。これらが脳梗塞などの脳障害に関与しているとして近年注目されているHMGB1の核外放出を引き起こしていると仮定した。本研究の目的はラット脳を用いて放射線照射後に生じる正常脳組織での放射線脳障害と、HMGB1の核外放出との関連性を明らかにするものであり、また、抗HMGB1抗体を用いて放射線脳障害の予防につながる治療法を模索するものである。 平成28年度はラットを用いて放射線照射モデルの作成を行った。まず放射線照射後にHMGB1の核外放出が見られることを確認するため、全脳への放射線照射を行った。放射線照射の強度、核外放出が見られる時期の模索を行った。その結果、効率的にその変化を観察できる放射線照射線量、時期を確認することができた。これらの実験と並行し、放射線照射の有無による違いをより明確に示すため、片側に限定した放射線照射モデルの作成を行った。 平成29年度は上記の結果を元に、放射線照射モデルでの実験を継続し、HMGB1の核外放出がまず基底核に生じ、その後数日で皮質においても生じていることが観察された。放射線照射により脳組織においてHMBG1の核外放出が生じ、また、その変化は部位により異なることが明らかとなった。HMGB1が脳内での放射線への感受性の違いに関係していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はラット脳に対する放射線照射実験を繰り返し、一定の放射線量を照射することでHMGB1の核外放出が見られることが明らかとなり、更に、その部位が照射後の時間により異なっている事が明らかとなった。平成29年度は片側の脳照射による組織変化の違い、また、組織のサンプリングでのサイトカイン誘導の変化を観察するべく実験を行っていたが、動物の体動などによる問題で十分な実験結果を得ることができなかった為、実験はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は昨年度の実験結果をふまえ、動物の照射装置に改良を加える。そこで片側の照射を行い、困難であれば全脳照射モデルでの実験を継続することも検討する。本年度は施行できなかった炎症性サイトカインの誘導をreal-time PCRを用いて評価し、その変化を観察する。また、抗HMGB1抗体を投与したマウスでの放射線照射モデルを作成し、HMGB1核外放出の有無を観察しその効果を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
実験計画の遅れにより、予定していた抗体や動物の購入、画像検査に要する費用などが使用されなかった。翌年度にそれらの費用を用いた実験を追加で行う予定である。
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Research Products
(5 results)