2016 Fiscal Year Research-status Report
概日リズム遺伝子の発現異常が関節軟骨に及ぼす影響に関する検討
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16K20035
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
赤木 龍一郎 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (10638315)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 軟骨細胞 / 変形性膝関節症 / 概日リズム / NR1D1 / BMAL1 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果を踏まえ、概日リズム制御の中核的遺伝子であるNR1D1およびBMAL1の発現が培養軟骨細胞において遺伝子レベルだけでなくタンパクレベルでも周期的な増減を示すかどうかの確認を行った。その結果、タンパクレベルでも上記遺伝子の発現が約24時間周期で増減することが示された。また、NR1D1およびBMAL1の発現をsmall interfering RNAを用いて抑制することで相互に発現量が影響を受けることも確認した。さらに、生体内で加齢あるいは変形性関節症の進行に伴って発現量が変化するかについて検討を行った。週齢のことなるマウスおよび、手術にて変形性関節症を誘導したマウスの膝関節を用い、免疫組織化学的染色でNR1D1およびBMAL1タンパクを染色したところ、週齢とともに発現が減少していることが確認され、さらに若い週齢であっても外科的に変形性膝関節症を発症させることでNR1D1およびBMAL1の発現が減少することが示された。これらの結果から、NR1D1およびBMAL1が生体から分離された軟骨細胞においても互いの発現をコントロールしあいながら周期的な発現をしていることが確認されたとともに、変形性膝関節症のヒト軟骨組織においてみられる概日リズム遺伝子の発現低下は加齢の影響だけでなく変形性膝関節症の発症そのものに関連することが示された。この事実は軟骨細胞の恒常性維持に概日リズムが深く関わっていることを示し、概日リズム制御機構が軟骨細胞において果たす役割の大きさを示唆する重要な成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術に際して培養軟骨を採取する計画であったが、当初の計画よりも軟骨が入手できなかったため、培養細胞を用いた実験が計画から少し遅れた。そのため、マウスを用いin vivoでの発現量を調べる実験を先行して行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はより多くの軟骨細胞を入手できるように人工膝関節置換術の切除軟骨組織を積極的に収集する。これにより培養した軟骨細胞を用いて、三次元培養での概日リズム遺伝子の発現およびその役割について検証を行う。また、当初計画ではノックアウトマウスを用いた実験まで考慮していたが、ノックアウトマウスの入手および軟骨特異的ノックアウトマウスの作成に要する費用が当初の計画よりも多く、また技術的にも高度であるため、small interfering RNAを用いて生体膝関節内で遺伝子発現を抑制することで変形性膝関節症の進行に変化が見られるかどうかを検討する方針に変更する。
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Causes of Carryover |
今年度は当初の計画と比べて軟骨組織の入手量が少なく、培養軟骨細胞を用いた分子生物学的実験が思うように施行できなかった。そのかわり、マウス変形性関節症モデルにおける病理組織学的検討を先行して行ったが、試薬や消耗品に要する費用が分子生物学的実験と比較して少なかったため、次年度への繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は附属病院で施行される人工膝関節置換術の際に切除される骨軟骨片からより多くの軟骨組織を採取予定であり、今年度施行できなかった培養軟骨を用いた実験を遂行する予定である。今年度からの繰越金は試薬や消耗品の購入に充当する予定とする。
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