2016 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷後に生じる神経障害性疼痛の痛みレセプター軸索輸送制御による新規治療の探索
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16K20036
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平井 高志 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (40510350)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 脊髄損傷 / 末梢神経障害 / 後根神経節 / 標的遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脊髄損傷動物実験モデルを用いて、疼痛部位を支配する末梢神経に発現する痛みレセプターのmRNAに着目し、RNAシーケンスにより非翻訳領域の構造変化を描出の後、損傷後に増加するバリアントmRNAを探索することを目的とする。発見し得た、病態に特異的に発現するバリアントRNAを標的分子として治療を行うことで、新規の中枢性神経障害に対する疼痛緩和を目指すことである。 本年度の目標として脊髄損傷モデルの解析に先立ち、末梢神経障害性モデルを作成し、障害された感覚神経細胞の遺伝子プロファイルを検索することから開始した。これはこの結果に基づき胸髄損傷モデルにおける当該レベルの肋間神経および末梢に存在する坐骨神経の遺伝子の動態を比較し、中枢神経レベルでの神経障害で特異的な変化をとらえ、脊髄損傷後に生じる神経障害性疼痛の治療の標的を検索するのが本研究の最終的な目標としているためである。次世代シーケンサーの結果は先行研究において非翻訳領域でバリアントが確認されたNav1.8の他にTRPV1やTRPA1の非翻訳領域においても既知のtranscriptの他に未知のreadを持つtranscriptが発見された。このtranscriptは損傷を受けていない培養神経細胞ではほとんど発現がないことから、これら未知のバリアントは神経損傷のシグナルによってはじめて細胞体で産生されるRNAと考えられ、今後の神経障害性疼痛メカニズムの解明と治療標的として大いに期待できるものと考えている。 平成29年度は脊髄損傷モデルの感覚細胞に焦点をあて、同様な細胞培養系実験を行い、発現パターンを末梢神経障害モデルと比較し、疼痛遺伝子がどのように発現変化を来しているのか、または未知のバリアントが発現しているのかを詳細に調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SDラット坐骨神経絞扼モデルを作成の後、一次求心性ニューロンであるL4およびL5DRGを取り出し、dissociateしたのちに軸索を単離し回収できるBoyden chamber上にDRG細胞を播種した。対照として健側DRGを用いた。これらのDRGを48時間培養の後、軸索部分と細胞体部分それぞれ別々に回収し、RNA抽出を試みた。十分量のRNAを次世代シーケンサで解析を行った。特に非翻訳領域である3’UTRに着目し、損傷DRG細胞の軸索では神経障害性疼痛に関連するTRPV1やTRPA1の3’UTRにおいて、既知のpolyAシグナルを超えた延長されたtranscriptが観察された。また、神経軸索輸送に関連するストレス顆粒に関連するmRNAも神経損傷軸索のみならず細胞体でも発現が増加していた。これらの確認をもって脊髄損傷モデルを作成する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は胸髄損傷モデルを作成し、肋間神経および坐骨神経それぞれの感覚神経の遺伝子プロファイルを作成し末梢神経損傷と比較し、原因遺伝子および治療標的分子を調査する予定である。
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Causes of Carryover |
。平成28年度は以前の実験サンプルを次世代シーケンサで解析したドライ実験を下に分子生物学的解析が可能であったため、比較的コストを抑えることができた。今年度は脊髄損傷モデルを作成し、サンプルを収集するために実験動物の購入と飼育費が必要である。また同時に分子生物学的解析に必要な試薬や次世代シーケンサの使用コストも予想される。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ラットを使用し脊髄損傷を作成する。手術用動物は予備実験や予期せぬ脂肪を含めると70匹程度必要となる。動物実験施設におけるラット購入および飼育費用が必要である。遺伝子発現パターンなどの分子生物学的解析には試薬が必須であり、購入が必要である。昨年度まとめたデータについては積極的に学会発表や論文作成を行い、さらなる研究計画を遂行することで成果をまとめ上げていく予定である。
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