2017 Fiscal Year Research-status Report
炎症性サイトカインに対する滑膜由来間葉系幹細胞の応答解析
Project/Area Number |
16K20039
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小森 啓一郎 東京医科歯科大学, 統合研究機構, プロジェクト助教 (20622624)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 滑膜幹細胞 / 関節炎 / 変形性膝関節症 / 炎症性サイトカイン / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞は滑膜、骨髄、脂肪などから比較的簡便に採取でき、自己増殖や間葉系組織細胞への分化能を持つことから、再生医療への応用が期待されている。滑膜から採取可能な間葉系幹細胞は高い軟骨分化能を持つため、自己再生能力に乏しい関節軟骨や半月板の再生医療に有用である。当施設では滑膜由来間葉系幹細胞を用いた軟骨再生等の臨床試験を精力的に行ってきたが、滑膜由来間葉系幹細胞の軟骨再生における作用機序は、未解明の部分が多く残されている。これらの作用機序の解明は滑膜由来間葉系幹細胞を用いた再生医療の発展・実用化には必須である。そこで、本研究では滑膜由来間葉系幹細胞による軟骨再生の作用機序の一端と考えられる炎症性サイトカインに対する滑膜由来間葉系幹細胞の応答を明らかにすることを目的としている。 前年度は、炎症性サイトカインの一つであるTNFαが、滑膜由来間葉系幹細胞に対して細胞増殖を促進させるが、多分化能には影響を与えないことを示唆する結果が得られた。 そこで、本年度はTNFα以外の炎症性サイトカインについて、滑膜由来間葉系幹細胞と滑膜以外の組織由来間葉系幹細胞に及ぼす影響を比較検討した。滑膜以外の組織として、骨髄由来の間葉系幹細胞を使用した。 滑膜由来間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞に炎症性サイトカインであるIL-1β、IL-1α、IL-6、抗炎症性サイトカインのIL-10をそれぞれ添加して培養を行ったところ、骨髄由来間葉系幹細胞では添加した全てのサイトカインで増殖への影響は見られなかった。一方、滑膜由来間葉系幹細胞ではIL-6およびIL-10は増殖へ影響を与えなかったが、IL-1α、IL-1βでは増殖の促進が確認された。 これらの事から、間葉系幹細胞は、由来組織によりサイトカインに対する応答が異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は、炎症性サイトカインの一つであるTNFαが、滑膜由来間葉系幹細胞に対して細胞増殖を促進させるが、多分化能には影響を与えないことを示唆する結果が得られた。 本年度は、間葉系幹細胞は由来組織によってサイトカインに対する応答が異なる可能性を示唆する結果が得られた。これはTNFα以外の炎症性サイトカインの滑膜由来間葉系幹細胞に対する影響について示唆しており、前年度の結果を補完する結果と考えられる。 さらに、応答するサイトカインと間葉系幹細胞の由来組織に特異的関係がある可能性を示唆する結果とも考えられ、これは、炎症性サイトカインの滑膜由来間葉系幹細胞に対する影響の作用機序に関連する可能性が考えられる。これらの事から順調であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、刺激前後の細胞の変化や、サイトカインの刺激を受けた滑膜由来間葉系幹細胞がどのような機序でその影響が表れるのかを、分子生物学や生化学手法により明らかとすることを試みる。また、間葉系幹細胞の由来組織によるサイトカイン応答が異なる原因について、さらに、炎症性サイトカインの刺激を受けた滑膜由来間葉系幹細胞が周辺の細胞や組織に及ぼす影響についての検証も試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、本年度は主に細胞培養を中心とした実験を行い、物品等は実験室の既存のものが使用できたこと、また実験に使用したサンプルの入手は手術時の検体が得られたことが理由である。 使用計画としては、次年度は、作用機序の解明を中心とした実験を計画している。さらに、本年度の結果を発展させるため、検体の種類を増やし、追加の実験を行うことも視野に入れている。作用機序の解明に必要な分子生物学および生化学の実験に使用する試薬・抗体及び資材、さらに、細胞培養に必要な試薬資材を購入する必要がある。
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