2016 Fiscal Year Research-status Report
早期発症側彎症のモデルD4ST1欠損型エーラスダンロス症候群の臨床的・基礎的検討
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16K20044
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上原 将志 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (30748108)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エーラスダンロス症候群 / 脊柱変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はD4ST1欠損に基づくエーラスダンロス症候群の患者のQOL/ADLを低下させる最も重要な症状である脊柱後側弯症に関する臨床的・基礎的研究からなる。 臨床的研究として、国内外症例の大規模調査に基づき本症における脊椎病変の自然歴・診療指針を構築すること、基礎的研究として患者及びノックアウトマウスの病理学的・生化学的検討からその発症機序を探索することが目的である。 本年度は臨床的研究として、信州大学医学部附属病院に受診歴のある国内患者9家系10人の脊椎病変を解析し、症例のまとめをおこなうことができた。6人(60%)に10°以上の側彎が、同じく6人(60%)に10°以上の後彎が認められた。2人が胸腰椎移行部の重度後彎により外科的治療を要した。5人(50%)に頸椎後彎が、2人(20%)に環軸椎亜脱臼が、そして、8人(80%)に頸椎変形が認められた。以上、本症候群における脊椎病変の特徴及び頻度、自然歴の一端を明らかにした。また基礎的研究として、ノックアウトマウスサンプリングの作出状況を確認しながら、骨格CT、骨病理など骨格所見を収集する準備を行った。 また本疾患患者に対して後方矯正固定手術を2期的に行った。手術時に骨組織、筋組織をはじめとした検体を採取し、生化学、病理学的に解析可能なように処理・保存を行った。今後病理組織学的な評価を行い、本疾患における脊柱変形発症にかかわる組織を確認する準備ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
信州大学医学部附属病院に受診歴のある国内患者9家系10人の脊椎病変を解析し、6人に10°以上の側彎が、同じく6人に10°以上の後彎が認められた。2人が胸腰椎移行部の重度後彎により外科的治療を要した。5人に頸椎後彎が、2人に環軸椎亜脱臼が、そして、8人に頸椎変形が認められた。以上、本症候群における脊椎病変の特徴、自然歴の一端を明らかにした。また、ノックアウトマウスサンプリングの作出状況を確認しながら、骨格CT、骨病理など骨格所見を収集する準備を行った。 本疾患に対する後方矯正固定術を実施し、骨組織を含めた検体を採取することができた。 今後病理的に解析できるよう処理を行い保存した。 患者の脊椎病変解析を継続し、得られたエビデンスを国際誌に発信すること、ノックアウトマウスが安定的に作出されるようになった段階で、ノックアウトマウスの脊椎病変に関する放射線学的、病理学的検討を行うことであった。患者の脊椎病変は論文作成中であり、ノックアウトマウスの骨格所見収集の準備を行ってきたことから、達成状況はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床的研究:海外症例を含めた本疾患の脊椎病変の自然歴、手術成績などの臨床症状の収集を継続し、収集し得たデータをもとに本症における後側弯症を初めとする脊椎病変についてさらなる分析をおこなう。 基礎的研究:手術で新たに得られた椎骨組織の病理学的分析を行う。 ノックアウトマウスサンプリングの作出状況を確認しながら、骨格CT、骨病理など骨格所見を収集する。患者骨組織及びノックアウトマウス由来骨組織における病理学的(免疫組織化学を含む)及び生化学的分析、iPS細胞から分化誘導した骨細胞を用いて生化学的・生理学的研究に順次進めていく予定。 これら臨床的、基礎的研究の成果を国内外の主要学会において発表、専門家との情報交換を行っていく。 また、これら研究の成果に基づき論文作成を行い、国際雑誌等に投稿する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた病理学的・生化学的解析や国際学会参加を次年度に繰り越したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降マウスの安定的供給が達成され次第、ノックアウトマウスの解析に取り組んでいく予定。H29年度請求額と合わせて試薬を購入し、病理学的、生化学的解析に取り組んでいく。 また次年度以降は研究成果発表及び情報交換のために国際学会へ参加する予定。
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