2016 Fiscal Year Research-status Report
L型カルシウムチャネルのベータサブユニットはサルコペニアの治療標的になるか
Project/Area Number |
16K20046
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小松 雅俊 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (60723070)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | L型カルシウムチャネル / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,サルコペニアの病態におけるL型カルシウムチャネル(LTCC)のβサブユニットの役割と、治療標的としての可能性を明らかにすることである。これまでの研究で,研究者らは,複数の筋萎縮モデルマウスに共通して,LTCCのβサブユニットの発現が増加していることを明らかにしてきた。 本年度の研究として,はじめに老齢マウスおよび坐骨神経を切除した除神経モデルマウスを用い,前脛骨筋の筋力、断面積、単位面積あたりの張力(特異張力)を測定した。その結果,両モデルでこれらのパラメータが有意に減少していることを確認した。 LTCCのβサブユニットには複数のスプライスバリアントが存在することが知られているが,筋萎縮時に増加しているのがどのバリアントであるか不明であった。そこで,個別のエクソンを認識する抗体を複数用いてウェスタンブロッティングを行った。その結果,存在するエクソンや分子量から,β1aと呼ばれるバリアントが増加していることが示唆された。また,βサブユニットの増加メカニズムを明らかにするために定量PCRを行ったが,mRNA量はコントロールと同レベルであった。さらに,増加したβサブユニットの細胞内局在を明らかにするために,除神経モデルマウスの前脛骨筋の組織切片を作製し,免疫染色を行った。その結果,βサブユニットは細胞質および細胞膜に多く分布していた。 これらの結果から,筋萎縮時におけるβサブユニットの増加は,mRNAの増加を介さない,分解抑制などの機序によって起きている可能性が示唆された。また近年,LTCCのβサブユニットが核内に移行して転写因子として働くことが報告されているが,今回の実験では核内への強い移行は認められなかった。 現在,βサブユニットと筋萎縮との関係をin vivoで解析するために,アデノ随伴ウイルスによる強制発現系の確立を目指して検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
mRNAの定量などの計画は予定通り遂行できた。当初はデキサメタゾン投与モデルなど,他の筋萎縮モデルでの検討も行う計画であったが,アデノ随伴ウイルスによる強制発現系の確立を優先的に行ったため,次年度に検討することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,他の筋萎縮モデルでもLTCCのβサブユニットの増加が見られるかどうか確認する。また,アデノ随伴ウイルスにより正常マウスの筋にLTCCのβサブユニットを発現させ,筋量や筋力への影響をin vivoで確認する予定である。この導入が成功した場合,同様にアデノ随伴ウイルスのシステムを用いて,筋萎縮モデルのβサブユニットをshRNAで抑制する実験を行う。
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