2016 Fiscal Year Research-status Report
プロテオーム解析を用いたデスモイド腫瘍の病態と新規バイオマーカーの探索的研究
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16K20047
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
濱田 俊介 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (90747289)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デスモイド型線維腫症 / βカテニン / Wntシグナル / 遺伝子変異 / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
デスモイド腫瘍は、その特徴的所見としてβ-cateninの核内への異常蓄積およびこれに起因するWnt signalの亢進の機序が報告されているが、臨床上の経過は症例毎に大きな幅があり、下流遺伝子の活性パターンなどの違いや他のシグナル系とのcrosstalkなど分子病態学的相違があることが予想された。本研究の目的は、最終的な遺伝子産物としての蛋白の発現評価が新たなバイオマーカーの同定と共に、変異型による分子病態的機序の相違の解析や新たな治療ターゲットの開発にある。 過去の報告よりTGF-βやEGFRの関与が示されており、蛋白の発現を予備的に評価した。デスモイド腫瘍で特異的なCTNNB1遺伝子の遺伝子変異や薬剤治療効果の異なる腫瘍の培養細胞を用いてcytokine arrayを施行し、コントロールの線維芽細胞との比較を行った。結果としていくつかのサイトカイン蛋白の発現亢進がデスモイド腫瘍細胞全般に認められ、また培養細胞毎でも発現パターンの違いが認められた。また腫瘍細胞内のβカテニンのリン酸化の状態を評価するため、非リン酸化βカテニン抗体およびtotal βカテニン抗体との染色性の比較を腫瘍組織切片に対して行った。 変異型毎もしくはメロキシカム治療効果で差のあるデスモイド腫瘍の違いを性質のさらに評価するため蛍光免疫染色によるイメージ解析により核内β-cateninや、細胞質内のリン酸化β-cateninの評価、Wnt下流遺伝子(Axin-2, Cyclin-D1, C-myc, COX-2)の発現評価およびMTS assayによる増殖能の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、変異型毎もしくはメロキシカム治療効果で差のあるデスモイド腫瘍細胞の性質の違いを蛍光免疫染色、RT-PCR、MTS assayなどで評価し、さらにバイオマーカーの同定のための予備的な評価手段としてサイトカイン蛋白の発現評価を行った。また腫瘍細胞内のβカテニンのリン酸化の状態を評価するため、非リン酸化βカテニン抗体およびtotal βカテニン抗体との染色性の比較を腫瘍組織切片に対して行った。 腫瘍組織から採取できる培養細胞の系統は限られており、蓄積している細胞の系統数がまだ不十分のため、変異型毎もしくは治療効果別の特定の傾向の差は評価できていなかった。今後は新規症例より細胞の系統数を十分に蓄積し、蛋白発現のパターンの相違を明らかにし変異型による分子病態的機序の相違の解析を進めていく必要があると考えている。 また網羅的な蛋白発現の評価を行うために必要なプロテオーム解析を用いた蛋白バイオマーカーの探索については、実験機器利用の習得や施設内での利用時間の確保が不十分であったため遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在蓄積中である変異型ごとのデスモイド細胞およびヒト皮膚線維芽細胞(Detroit 551)を用いて、腫瘍組織と同様にプロテオーム解析を行い蛋白発現プロファイリング行う。またWnt刺激剤(Wnt3a)やWnt阻害剤(IWR-1, Quercetin)を用いて細胞のWnt系を亢進もしくは抑制させ、同様に同定された蛋白の発現変動をWesternblottingにて定量することで、バイオマーカー蛋白や治療標的蛋白とWnt系との関連性を評価する。 また上述の方法によるWnt刺激/抑制下での各Wnt系シグナルの変動について評価の上、それらの結果とバイオマーカー蛋白や治療標的蛋白との相関性を検討しWntカスケードへの関与部位と関与度を評価する。具体的にはTOPFLASHによるWntシグナル活性の測定や、抗リン酸化/非リン酸化β-catenin抗体を用いてリン酸化β-cateninの存在量および割合をWesternblottingにて評価し、また蛋白を核内と細胞質に分画することで核内移行したβ-cateninの定量を行う。また新たに治療標的蛋白を同定する手段として既存薬のライブラリーを用いたドラッグスクリーニングを行い、Wntシグナル活性や増殖活性の抑制を評価することで治療効果のある薬剤を選択し、その作用機序より標的となる蛋白を同定する手法についても検討している。
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Causes of Carryover |
プロテオーム解析が当初の予定より進行していないため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CTNNB1遺伝子解析やRT-PCT、プロテオーム解析を行うため試薬や、機器利用費などに研究費を使用予定である。また研究結果の発表に関連する学会および論文構成費用、また研究に関連する書籍の購入費用に研究費を使用する予定である。
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