2016 Fiscal Year Research-status Report
多能性幹細胞由来運動神経細胞を用いた神経再支配による麻痺筋の新規治療戦略
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16K20048
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新海 宏明 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (50770898)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 末梢神経機能再建 / 運動ニューロン前駆細胞 / 細胞移植 / 脱神経筋の神経再支配 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は下位運動ニューロンの機能障害に対し、末梢神経内にES細胞由来の運動ニューロン前駆細胞(MNPCs)を移植することで、筋の神経再支配による神経機能改善の方法を検討した。 ラット・マウスの左坐骨神経を切断し、一週間後に遠位断端脛骨神経管内へMNPCsを移植した。マウス(ICR、NOD-scid、C57BL/6、129)に対してマウスES細胞(CAG-EGFP-EB3)由来MNPCsを、ラット(F344、F344/N-rnu)に対してマウスES細胞(ff-luc-EB3) 由来MNPCsを1×106個、neurotrophic factorとともに移植した。F344に対してはFK506による免疫抑制を行った。 移植後1、4、8、12週で腓腹筋の組織学的評価と、神経断端の電気刺激による腓腹筋収縮の有無、腓腹筋湿重量の測定を行い、ラットはin vivo imaging system: IVISによる移植細胞の経時的変化も解析した。 ICRマウスへ移植した群は、組織学的解析により短期の移植細胞の生着を確認した。NOD-scidマウスへ移植した群は、生着はしたが腫瘍化を認めた。C57BL/6と129マウスへ移植した群では良好な細胞の生着が得られた。移植群はコントロールと比較して筋萎縮が抑制される傾向を認め、移植後4週以降には一部個体で断端神経刺激による腓腹筋収縮を認めた。ラットについてはIVISで移植細胞の生着を確認しており、長期経過観察中である。 一部の個体にMNPCs移植の効果と考えられる脱神経筋の神経再支配によると考えられる筋収縮を認め、運動機能再建への応用が期待される。今後、さらなる移植条件の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞移植の実施に伴い、targetとなる動物の免疫によると考えられる移植細胞の消失が認められることがあり、生着し機能的な回復を得られるための障害となっている。免疫抑制剤の使用を行っているが、小動物のためコントロールが難しく調整中である。 また実験計画段階ではES細胞にチャンネルロドプシン発現蛋白を組み込み移植する予定であったが、移植細胞そのものの働きと共にendogenousな組織の働きもかなりあるような結果(移植細胞が移植後中期~長期経過すると神経内から消失するも神経突起の発現を確認できる)が得られているため、細胞生着のための条件検討とともに生着しなくとも機能的再建が得られるような可能性とそのメカニズムを明らかにする実験デザインを検討中である。移植細胞そのものによる働きを確認する意味でチャネルロドプシンを組み込んだES細胞樹立のための準備も行っているが、並行して実験を行っているため若干の計画の遅延を認める。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫によると考えられる移植細胞の生着率の低下問題を解決するために同様の実験を繰り返し、移植細胞の生着が得られるような再現性のある治療モデルを作成する。具体的には免疫抑制剤の使用、免疫抑制モデルのラットまたはマウスを用いた実験系を考慮しているが、最終的な治療に係るモデルを目指すため、基本的には同種移植に対して免疫抑制剤の使用下における移植成功率の改善を目指す。また、並行し細胞数や移植細胞のフェーズなど移植条件の検討を行い結果を評価していく(長期経過でしか機能再生の評価ができないケースも多いため、評価には時間を要する)。 免疫を強く抑制する条件下では移植細胞の腫瘍化を認めているため、移植細胞の分化抵抗性細胞の除去をFACSやMACSなどcell sortingにて行う予定である。 移植細胞の生着がコンスタントに良好となれば、細胞を移植する動物や部位を工夫し臨床応用を視野に入れ、humanの治療に役立てるような方法を検討する予定である。現状ではよりヒトに近い哺乳類の免疫抑制制御下におけるhuman iPS細胞の移植により末梢神経の機能再建を目指す。
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Causes of Carryover |
研究維持のための動物や試薬をvolume discountなどで安く購入することができたため。また、研究予定であった実験系を実施するのに時間を要し、試薬や動物の購入がの予定が後ろにずれ込んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
移植細胞の生着評価のための免疫染色に関する試薬、免疫抑制剤、in vivo imagingに必要なルシフェリンなどの購入。また、マウス・ラット・ミニブタなど動物の購入。チャネルロドプシンをプラスミドでES・iPS細胞に導入したのちは、神経細胞発火用の埋め込み型LEDの購入を検討している。
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