2016 Fiscal Year Research-status Report
腱板骨結合部修復過程におけるScx発現前駆細胞の動態解明
Project/Area Number |
16K20062
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
徳永 琢也 熊本大学, 医学部附属病院, 医員 (60759520)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Scleraxis / Sox9 / 腱板 |
Outline of Annual Research Achievements |
basic helix-loop-helix型の転写因子であるScleraxis(Scx)は腱・靱帯およびその結合部を形成する前駆細胞で特異的に発現し、近年、Scxと転写因子のSRY-box containing gene 9(Sox9)を共発現する前駆細胞集団が腱・靱帯の付着部を形成することが報告されている。成体の腱板骨結合部損傷後の修復過程におけるScxおよびSox9発現前駆細胞の参画を明らかにするために、Scxの発現領域でGFPを発現するScxGFPマウス(20週齢)の腱板骨結合部損傷モデルを作製し、その組織切片を用いて免疫染色による解析を行い、Scx発現細胞の局在を経時的(損傷後3日、1、2、4週)に評価した。その結果、損傷部は損傷後1週から2週にかけて紡錘形の間葉系細胞と血管が豊富な肉芽組織で充填され、4週にかけて修復部のコラーゲン線維配列の改善を示すSecond harmonic generation(SHG)信号の増強を認めた。損傷後4週までに付着部線維軟骨層の再構築は認めなかった。損傷後2週以降の修復部においてSham群より多くのScx発現細胞が認められ、腱板と修復組織の境界ではSHG信号が高い領域に一致してScx発現細胞が認められた。損傷群、Sham群共にScx/Sox9共発現細胞は期間内においてほとんど観察されなかった。以上の結果から、成体の腱板骨結合部損傷後の修復過程において、Scx発現細胞はコラーゲン線維配列の高い修復組織形成に寄与する可能性が示唆された。また、本モデルの修復過程において正常の付着部線維軟骨層が再生しないことと修復部で観察されるScx/Sox9共発現細胞が少数であることの関連性が示唆された。現在、Scx発現細胞の増殖能および分化能を明らかにするため、増殖期細胞および間葉系幹細胞マーカーとの二重免疫染色による解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ScxGFP遺伝子改変マウスの繁殖が遅れており、予定の標本数が達成できていないため、当初の予定よりやや遅れていると判断した。しかし、計画していた評価手法は確立されており、マウスの繁殖も安定してきていることから、次年度の解析は予定通り進めることができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度と同様の動物モデルを用いて、修復過程におけるScx発現細胞の増殖能および分化能を確認するため、間葉系幹細胞マーカー(Sca-1、CD90)、成熟腱細胞マーカー(Tenomodulin)、増殖期細胞マーカー(Ki67)とGFPの二重免疫染色による解析を行う予定である。さらに、Scx発現細胞におけるFGF、BMP、TGFシグナルの関与を確かめるために、それぞれのシグナル伝達因子のリン酸化を免疫組織学的に解析し、修復過程におけるScx発現細胞の分化と同時期に作用しているシグナルを同定する予定である。
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