2016 Fiscal Year Research-status Report
アセトアミノフェンの脊髄後角における鎮痛機序解明と新規投与経路の開発
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16K20081
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大橋 宣子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70706712)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アセトアミノフェン / AM404 / パッチクランプ記録 / 脊髄後角 / TRPV1受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として広く使用され、その主な作用機序は代謝物のN-アシルフェノールアミン (AM404)が脳に移行し、TRPV1やCB1受容体を活性化することであるとされている。一方、TRPV1やCB1受容体は、ともに痛みや炎症の治療ターゲット部位であり、脳内に多く存在するばかりでなく脊髄にも存在することが知られている。しかし、痛覚伝導路である脊髄後角へのアセトアミノフェンの作用の可能性、またその機序は明らかではない。そこで我々は、まず行動学実験によりWistar系成熟雄性ラットのくも膜下腔にAM404を投与し、Von Frey testによる痛み閾値や熱刺激に対する逃避行動の潜時を記録し、濃度依存性に鎮痛効果を発揮することを確認した。次に、パッチクランプ記録を行い、脊髄後角ニューロンにおけるアセトアミノフェンの作用を電気生理学的に検討した。その結果、in vivoパッチクランプ法では、アセトアミノフェンの投与により末梢からの痛み刺激に応答する興奮性シナプス後電流(EPSC)の面積を有意に抑制した。さらに脊髄横断スライス標本を用いたin vitroパッチクランプ法では、AM404はAδ線維ではなく、C線維刺激による単シナプス性EPSCを有意に抑制した。また、これらの反応はTRPV1受容体拮抗薬でほぼ完全に拮抗された。よって、アセトアミノフェンはAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し鎮痛効果を示すことが明らかになった。以上の研究により、アセトアミノフェンの脊髄後角における鎮痛効果が示されたため、今後、新しい投与経路として直接脊髄や硬膜外投与が考えられ、少ない投与量にて確実な鎮痛効果を得ることができる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アセトアミノフェンはAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し鎮痛効果を示すことを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によりアセトアミノフェンがAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し鎮痛効果を示すことを明らかにすることができた。しかし、通常アセトアミノフェンは痛みの存在下で使用することが多い。そのため、これまではnaiveラットを用いてきたが、今後は疼痛モデルラットである術後痛や炎症性疼痛モデルラットを用いて同様の実験を行い、その反応を検討する必要がある。よって、今後は術後痛モデルラットおよび炎症性疼痛モデルラットを用いて行動学実験や電気生理学実験を行い、痛みが存在する中でアセトアミノフェンが脊髄後角においてどのような反応を示すか検討していく予定である。また平成29年度では、これまでの研究成果を発表するために、予算を国内外の学会参加や論文投稿の費用に使用していく予定である。
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Causes of Carryover |
電気生理学実験を行うにあたり、以前から使用していた機器であり不具合が生じていたため新たな購入を検討していた。しかし、メンテナンスや修理のみで研究を遂行することができた。そのため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度ではこれまでの研究成果を発表するために、国内外の学会参加費や論文投稿料として使用する見込みである。
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Research Products
(3 results)