2017 Fiscal Year Research-status Report
脊髄後角GABAA受容体δサブユニットの神経障害性疼痛における役割
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16K20094
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
博多 紗綾 関西医科大学, 医学部, 助教 (00771031)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | GABA / 神経障害性疼痛 / 脊髄後角 |
Outline of Annual Research Achievements |
GABAA受容体を介した抑制性電流には、シナプス後膜のGABAA受容体に高濃度GABA(数μM)が結合することにより一過性にチャネルが開いて発生するphasic電流と、シナプス間隙に漏出した低濃度GABA(数nM)が、シナプス周囲に存在するGABAに非常に親和性の高いGABAA受容体に結合し持続的にチャネルが開いて発生するtonic電流の二種類がある。中枢神経細胞におけるtonic電流はアルコールや麻酔作用メカニズムに重要な役割を果たしていることが明らかになっている。一方、痛み伝達に重要である脊髄後角神経細胞にもtonic電流の存在が明らかになっているが、その生理学意義の詳細は明らかになっていない。これまでに我々は、神経障害性疼痛モデルマウスであるChronic cuff Injury(CCI)マウスで、tonic電流を有する脊髄後角度膠様質(substantia gelatinosa: SG)細胞が減少していることを明らかにした。また、SG細胞におけるGABAA受容体δサブユニットの蛋白発現量の減少も判明した。 本研究では、δサブユニットを介するtonic電流の減少とCCIマウスの疼痛についてのより詳細な検証を目的とし、δサブユニットの経時的な発現の変化をリアルタイムPCR法を用いて検証した。また、δサブユニット特異的アゴニスト4,5,6,7-tetrahydroisoxazolo(5,4-c)pyridine-3-ol (THIP)の CCIマウス神経障害性疼痛に対する効果を行動学実験により検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
術後7、14日目において、CCIマウスSG細胞におけるGABAA受容体δサブユニットのmRNAの発現は有意に低下していた。この発現量の低下は、CCIマウスの熱への知覚過敏が消失する術後21日目から回復し、28日後にはNaïveマウスと同程度の発現量になった。 術後7日後にδサブユニット特異的アゴニストであるTHIPを髄腔内投与したところ、CCIマウスでは熱刺激に対する疼痛閾値の改善を認めた。一方、Naïveマウスの熱刺激に対する逃避時間には変化を及ぼさなかった。CCIマウスが熱刺激に対する知覚過敏を呈する期間と、SG細胞におけるGABAA受容体δサブユニットmRNAの発現量の低下時期に相関性が見られたことから、CCIマウスの熱知覚過敏は、SG細胞におけるδサブユニット介在性tonic電流の減少が関与している可能性が高いと考えられた。またTHIPは、熱刺激に対する知覚過敏の鎮痛に有効であったことから、神経障害性疼痛の治療に貢献する可能性があることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
神経障害性疼痛の治療に脊髄後角のGABAA受容体が貢献していることが判明し、δサブユニットが神経障害性疼痛の緩和を与えることが分かったので、ヒトへの臨床応用を目的とし、経口摂取での動物実験を行う。
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Causes of Carryover |
前年度の実験結果のうち、論文に書ききれなかったものを論文化し、国内・海外の学会で発表する。
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