2017 Fiscal Year Research-status Report
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた悪性高熱症の低侵襲的診断法の確立
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16K20098
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
近藤 隆志 広島大学, 病院(医), 助教 (20711774)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 悪性高熱症 / 低侵襲的診断法 / 人工多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性高熱症の診断には、機能検査として筋生検によるCa-induced Ca release(CICR)検査やIn vitro contracture test (IVCT)が必要であり、特に小児患者においては筋生検が全身麻酔を伴う侵襲的検査であることが問題である。本研究は、血液もしくは皮膚から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作成した後、iPS細胞を筋細胞へ分化誘導し、筋細胞を培養増殖させて作成した筋組織を用いて機能解析を行うことで、悪性高熱症の低侵襲的診断法を確立することを目指している。 前年度は血液からiPS細胞を作成することが困難であったため、今年度は使用する材料を線維芽細胞に変更して、線維芽細胞からのiPS細胞作成を試みるとともに、線維芽細胞にiPS細胞を経由せずに直接骨格筋細胞への分化誘導を促す転写因子(MyoD1)を組み込んだ遺伝子発現ベクターを導入することにより線維芽細胞を筋芽細胞に分化させて骨格筋細胞を作成する代替実験を前年度から継続して行った。また、機能検査と並行して計画していた遺伝子情報解析の一環として、対象となるCICR検査を行われた患者から新たに同定された遺伝子変異に対して、human embryonic kidney細胞(HEK細胞)を用いた機能解析を行った。 線維芽細胞からのiPS細胞作成は血液からの作成と同様に困難であり、本年度中は確立するに至らなかった。代替実験としての線維芽細胞から筋芽細胞への転換を経た筋管細胞作成は可能となっているが、次の段階である筋管細胞による機能解析を安定して行える状況には至っていない。HEK細胞による機能解析の結果からは、今回解析した遺伝子変異が悪性高熱症の発症原因の一つである1型リアノジン受容体の機能異常をきたすことが示されたため、その成果について学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
iPS細胞を作成する上で必要なベクターの選定や使用する試薬、培養環境の問題などがiPS細胞作成ができていないことに影響していると考えられる。 線維芽細胞から直接筋細胞を作成する代替実験に関しては、作成した筋管細胞のうち機能解析を行うことができるリアノジン受容体を発現した細胞の数が十分確保できていないことが問題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
iPS細胞の作成に関しては、自施設での作成が困難である場合は細胞を購入して実験を進めることを検討する。 線維芽細胞から直接筋細胞を作成する代替実験に関しては、作成した筋管細胞の培養条件を再考して安定した細胞培養法を確立した上で機能解析を試みる。 遺伝子情報解析に関しては、今年度に得られた成果を論文化して報告する。
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Causes of Carryover |
(理由)物品費が当初見込みより必要なかったため、次年度以降の物品購入に充てることとした。 (使用計画)細胞購入、細胞培養、遺伝子導入、データ解析に必要な物品を購入する予定である。
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