2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代型人工膵臓でAKI予防に挑戦―酸化ストレスからのアプローチ―
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16K20102
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
箕田 直治 徳島大学, 病院, 助教 (30710644)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 急性腎障害 / 酸化ストレス / 人工膵臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
循環器系をはじめとしたさまざまな臓器障害発症に対する酸化ストレスの関与が注目されている。高侵襲手術後に発生する重要な合併症のひとつであり、生命予後にも影響する急性腎障害(acute kidney injury: AKI)の発症にも酸化ストレスの関与が報告されている。 全身麻酔下に腹部手術を受ける成人患者のうち、アメリカ麻酔学会術前状態分類がⅠ~Ⅲのものを対象として、麻酔導入前、導入後、手術終了時の各時点で採血し、d-ROMs testおよびBAP testを行い酸化ストレスと抗酸化力を定量評価した。麻酔導入はpropofol, remifentanil, rocuroniumで行い、麻酔維持にはdesflurane, remifentanil, rocuroniumを使用した。術後48時間以内に血清クレアチニン濃度が0.3mg/dL以上上昇したものをAKI群、上昇が認められなかったものをnon-AKI群とし、術前・術中因子の各項目について比較した。術前因子の中で両群間に有意差を認めたものに関してロジスティック回帰分析を行い、術後AKI発症との関連性を評価した。 AKI群では麻酔導入前と導入後のd-ROMs値が有意に高く、酸化ストレスが亢進していることが確認された。手術終了時のd-ROMs値では両群間に有意差はなかった。また、麻酔導入前のd-ROMs値は術後AKI発症の予測因子として有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎疾患に耐糖能異常がなければ術中の血糖値上昇は比較的穏やかであり、人工膵臓から投与されるインスリンの量も少量であるため本研究の対象として不適切であると考えられた。したがって、耐糖能異常のある患者のみを対象とした場合、肝切除術だけでは思うように対象患者数が得られず、やむなく研究対象を腹部手術を受ける患者に拡大した。酸化ストレスの指標であるd-ROMs値が術後AKIの予測因子として有用であることは確認された。しかし、耐糖能障害を持った患者の術中血糖コントロールが酸化ストレスに与える影響と術後AKI発症との関連性については未だ確認できていない。 患者数が十分に集まっておらず、進捗状況としてはやや遅れているをと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
術前のd-ROMs値として測定される酸化ストレスが術後AKI発症の予測因子になりうることは確認された。今後も引き続き耐糖能障害のある腹部手術患者を対象としてデータ収集を継続し、酸化ストレス亢進状態の患者に対して人工膵臓による血糖コントロールを行うことで術後AKI発症が抑制されるという仮説を検証するために研究を継続する。
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Causes of Carryover |
【理由】 研究対象患者を耐糖能異常を合併した者に限定したため対象症例数が少なくなり、その結果物品費等が想定よりも少なくなった。 【使用計画】 翌年度の助成金と合わせて、統計解析用のコンピュータ、統計ソフト、測定試薬などの物品費や、研究結果発表の際の旅費に使用する予定である。
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