2016 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素代謝が低酸素環境下で細胞の代謝リプログラミングに与える影響の研究
Project/Area Number |
16K20119
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
甲斐 慎一 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (30770177)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低酸素 / 硫化水素 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、硫化水素代謝が低酸素環境下においてエネルギー需給バランスに与える影響を検討することを目的としている。硫化水素は細胞内で代謝(酸化)されると、ミトコンドリア呼吸鎖に電子を供給しATP産生を促すとされている。これは、TCA回路経由でミトコンドリア呼吸鎖に電子を供給しATPを産生する経路とは別経路であるが、より多くの酸素を必要とする。低酸素環境下で細胞内代謝は低酸素誘導性因子(Hypoxia-inducible factor 1, HIF-1)によって好気性から嫌気性代謝へとリプログラミングされる。本研究では、硫化水素代謝亢進が低酸素環境下における細胞内エネルギー需給バランスに与える影響をHIF-1活性の解析を基軸として検討し明らかにしていく。 現在までのところ、主に二つの実験に取り組んでいる。 一つは、培養細胞を用いて人為的に硫化水素代謝を変動させた実験系を確立することである。関連する酵素である、Sulfide quinone reductase (SQR)、Ethylmalonic encephalopathy 1 protein(ETHE1)の発現プラスミドをヒト由来培養細胞に導入し硫化水素代謝が亢進した培養細胞を作製した。導入効率等を確認後、低酸素によるHIF-1活性化への影響を検討している。一方で、硫化水素代謝を抑制させた条件での検討を行う為、siRNAを用いて関連する酵素の発現量を抑制させた培養細胞を用いて検討を行う予定である。 もう一つは、低酸素刺激が細胞内硫化水素代謝に及ぼす影響を検討している。これまでに低酸素暴露によりSQR活性が亢進するという報告があるが詳細は明らかになっていない。また、申請者らはマウスを用いた実験で低酸素暴露で組織内の硫化水素代謝が亢進する結果を得ている。低酸素刺激での硫化水素代謝亢進の機序について詳細に検討を行う為、培養細胞を用いた実験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者は、2016年度5月に関西医科大学より京都大学に施設を移動した。そのため、申請時に予定していた実験施設とは別の施設で実験を行うことになった為、新たに実験施設の整備、器具等の準備を行う必要が生じた。また、施設移動に伴い新たな実験施設での実験計画書等の提出による手続きに時間を要した為、研究の計画はやや遅れている。 現在は、科研費による器具の購入や申請書の提出を済ませ実験系の確立に取り組んでいる。実験計画に多少の遅れは生じたものの実験環境は整い、計画通りの研究を次年度で進めていく予定である。今後は実験協力者との連絡を密にして、より円滑に実験を進めていく。次年度に実験施設を移動することはない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、硫化水素代謝に関連する酵素SQRとETHE1のプラスミドを取得し、プラスミドを培養細胞に導入し硫化水素代謝が亢進した培養細胞を用いて実験を行っている。培養細胞を低酸素に暴露させ細胞内代謝環境の変化並びにHIF-1活性化への影響を検討していく。基本的な実験については施設移動等の影響は少ないため、計画通りに実験を行うことができると考えている。ただし、細胞内硫化水素濃度の測定については以前の施設とは異なるため、新たに測定環境を整える必要がある。実験協力者に連絡を取り速やかに測定できる環境にする予定であるが、実験が滞った場合には他の方法で代替することも考慮している。 次年度にはマウスを用いたin vivo実験も計画している。これについては、動物実験施設が併設されているので実験可能と考えている。in vitro実験を進めていくとともに、in vivo実験を行えるように環境を整備していく予定である。
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