2016 Fiscal Year Research-status Report
過活動膀胱発症に関与するシグナル伝達系の同定と新規治療薬・診断マーカーの開発
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16K20150
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
赤井畑 秀則 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (70644178)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 慢性膀胱虚血 / 過活動膀胱 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、過活動膀胱は症状のみで診断されている。そのため、その治療は症状に対応した対症療法となっており、その病因や病態生理に即した治療が行われていない。過活動膀胱を引き起こす原因は多岐にわたり、その発症機序はいまだ解明されていないのが現状である。病因によって過活動膀胱発症機序も異なると考えられ、病因ごとに適切な診断や治療を行っていく必要がある。今回、慢性膀胱虚血ラットモデルを用いた遺伝子発現機能解析を行い、過活動膀胱発症機序の解明と診断マーカーとなりうる尿中物質の検索を行った。本研究は、慢性虚血に伴う膀胱機能障害発症メカニズムの解明から日常の臨床に応用できる診断マーカーを開発することを目的としている。当講座で開発した慢性膀胱虚血ラットモデルとは、両側腸骨動脈にバルーンによる内皮擦過障害を施し、高脂血症で8週間飼育したモデルである。これによって骨盤内の動脈に閉塞性硬化性病変を引き起こし、膀胱を慢性虚血状態としている。今回、16週齢SD系雄性ラットを①無処置+通常食飼育群、②無処置+高脂肪食飼育群、③偽手術+通常食飼育群、④偽手術+高脂肪食飼育群、⑤両側総腸骨動脈内皮障害+通常食飼育群、⑥両側総腸骨動脈内皮傷害+高脂肪食飼育群(慢性膀胱虚血ラットモデル群)の6群に分け、8週間飼育した。その後膀胱を摘出し、網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、慢性膀胱虚血ラットモデル群は無処置+通常食群、偽手術+通常食群と比べ葉酸代謝経路、脂質代謝、コレステロール生合成、尿路上皮のバリアー機構に関連する遺伝子発現が亢進していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性膀胱虚血ラットモデルを用いた遺伝子発現解析を施行し、正常ラットと比較して変化しているシグナル伝達系を確認することができた。そのシグナル伝達系の中には排尿障害に関与している可能性があるものが含まれていた。今回の遺伝子発現解析の結果から、慢性虚血により尿中濃度が変化する物質や、慢性虚血に伴う過活動膀胱への治療薬となりうる薬剤の推測を行うことが可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の遺伝子発現解析で確認できた虚血により変化しているシグナル伝達系から、尿中診断マーカーや治療薬となる可能性があると推測された物質について、その尿中濃度測定や慢性膀胱虚血ラットモデルへの薬物効果を確認していく。
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Causes of Carryover |
平成28年度までに行った遺伝子発現解析の結果をもとに、慢性虚血により変化する可能性のある物質の尿中濃度測定や、治療薬となりうる薬物を実際に投与した際の慢性膀胱虚血ラットモデルの排尿状態の評価を行っていく。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
慢性膀胱虚血ラットモデルの尿中の、検討した物質の濃度を測定する。その濃度を正常群の尿中濃度と比べて、実際に慢性虚血により尿中でその物質が変化しているかを確認する。また、尿を検体としたその物質の簡便な測定方法についても考察し、その測定法の確立を目指していく。 また、今回の遺伝子発現解析の結果で確認した、慢性虚血により変化したシグナル伝達経路に影響を与える薬剤を慢性膀胱虚血ラットモデルに投与する。投与後に膀胱内圧測定・等尺性張力実験・膀胱の組織組織学的評価を行い、投与していないラットモデルの膀胱機能と比較する。そこから、薬剤が慢性虚血膀胱の機能に与える影響について確認する。
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