2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒト骨格筋由来幹細胞を用いたラット尿道括約筋の再生
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16K20164
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中島 信幸 東海大学, 医学部, 助教 (20580319)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生医療 / 尿失禁 / 骨格筋幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度はヒト骨格筋由来幹細胞を用いたラット尿道損傷モデルへの移植実験を行った。以下に詳細を示す。【方法】移植に使用した細胞は、ヒト腹直筋から酵素処理(コラゲナーゼ)処理により抽出、フローサイトメトリーでCD34+/45-(Sk-34)とCD29+/34-/45-(Sk-DN/29+)分画として分離・精製した。その後、両細胞群を最適な条件下で、個別に2週間培養・増幅した。ヌードラットをレシピエントとし、尿道括約筋損傷モデルを作成した。Sk-34とSk-DN/29+両細胞群を移植直前に混合し、ペレット化して、尿道損傷部位に直接貼付し、フィブリンゲルにより周囲をカバーした。同量のフィブリンゲルのみを使用した群を非移植群とした。回復期(6週間後)の機能評価として仙骨部からの経皮的電気刺激による尿道内圧変化を測定した。細胞の生着と分化能については、免疫組織化学さらに免疫電子顕微鏡的検索を行った。細胞の分化能とパラクライン効果を調べるために、骨格筋・神経周囲細胞・血管細胞系統の特異的マーカーならびに神経栄養因子・血管因子の発現をRT-PCR法により解析した。血管新生に関わるキーサイトカインのタンパクレベルでの発現については、抗体アレイキットを用いて解析した。【結果】移植6週後に、移植群では有意に高い尿道内圧の回復を認めた(移植群:70.2%、非移植群:39.1%、p<0.05)。移植したヒト細胞は、活発に尿道損傷部に着床・増殖し(移植細胞数の約2.5倍)、骨格筋細胞、サテライト細胞、シュワン細胞、神経周膜細胞、血管周皮細胞に分化していることが確認された。また、CT群の尿道損傷部において血管形成が促進していた(非移植群の約3倍)。さらに、血管新生に関連するサイトカイン分泌が、mRNAとタンパク質の両レベルで確認され、活発なパラクライン効果による血管形成を裏付けていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ヒト由来骨格筋由来幹細胞を用いた実験的ラット尿道損傷モデルの再生の研究結果については、既にTransplantationにacceptされており、当初の2016年度の目標は達成されているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、2017年度は大型動物(ブタ)を用いた臨床前実験を行う予定であったが、現状では資金が不足している状況である。そのため、臨床応用を見据え、大型動物実験の前段階として、ヒト骨格筋幹細胞の長期の移植効果の検討、さらにはNOD SCIDマウスを用いた幹細胞の腫瘍化のチェック等を行う。並行して、大型動物実験を行うための資金獲得を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
尿道機能測定法における手技が、先行研究において確立していたため、データ収集が当初の計画よりも順調に進んだことと、移植細胞の良好な生着分化能によって当初の計画よりもラットや試薬等の節約が可能であったことが原因と考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は大型動物実験の前段階として、主に以下の3点の検討を行う予定である。①2016年度と同様の実験モデルを用いたより長期間の移植効果の検討、②骨格筋幹細胞の腫瘍化の有無のチェック、③移植によるパラクライン効果についての詳細な解析。以上の実験ための動物ならびに試薬費、成果発表の費用等して研究費を用いる予定である。
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Research Products
(2 results)