2017 Fiscal Year Research-status Report
貧血ラットに対する後腎移植および骨髄幹細胞移植の影響に関する検討
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16K20165
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
勝岡 由一 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10770109)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エリスロポエチン / 慢性腎不全 / 腎性貧血 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット胎仔の後腎を成熟ラットの脂肪組織内に移植すると、移植後腎を核として自己の骨髄間葉系幹細胞(BM-MSC)が集まり、エリスロポエチン(EPO)産生臓器へと分化し(Stem Cells 2012;30:1228-35)、さらに,他者由来の間葉系幹細胞(MSC)を追加投与するとエリスロポエチン産生臓器への分化がより促進される。これらの発見に基づいて我々は、腎不全患者の体内で半永久的に自己由来のEPOを産生する臓器を作成することにより、腎不全に伴う腎性貧血に対する新たな治療法の開発を模索している。その基盤研究として本研究では、後腎を移植したラットへのMSCのより効果的な追加投与方法を検討することにより、エリスロポエチン産生能を向上させる手法の開発をめざす。 昨年度は、①後腎移植+MSC経静脈的投与、②後腎移植+MSC後腎被膜下投与、②後腎移植のみ(対照)の3群間でEPO産生能をヘマトクリット(Hct)値を指標に比較したところ、各群間で差を認めず、実験系の見直しが必要となった。本年度は腎性貧血動物モデルの作製法ならびにMSCの投与方法の改善を試みた。 今回は、予めラットの片腎を5/6切除し(対側はそのまま)2週間の回復期間を置いた後に開腹し、後腎移植・未処理の対側腎摘出・瀉血・閉腹の手順で病態モデルを作製した。また、MSC投与法として経静脈的投与と経腎動脈投与を試みた。後腎被膜下への投与法は、後腎組織の損傷が生着率の低下を招くことが明らかになったので除外した。 その結果、腎性貧血ラットモデルをほぼ失敗なく作製することが可能になった。しかし、血管からMSCを投与する方法ではしばしば血管や肺に塞栓を引き起こすことが課題として残った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験に用いる病態モデルについては、ほぼ安定的に作製することが可能になった。後腎移植は、摘出から後腎組織のトリミングを経て移植までの操作を可能な限り迅速に行うことが成功率を上げるために重要であった。 MSCの後腎への直接投与は、その操作が加わることにより摘出から移植までの時間が延長し、組織の劣化を招くことで成功率低下につながった。そのため、経静脈的または経動脈的に投与する方法に限定することにしたが、血管経由での投与では、細胞塊が血管を塞ぐことがあり、その結果、肺塞栓を起こすことや、MSCが局所へ十分届かない可能性が考えられた。したがって、さらに注入液の細胞濃度や投与に用いる血管の吟味などが引き続き必要となった。 移植した後腎からのEPO産生量を調べる方法として、ホストラットの血中EPO量の定量やHct値の測定が有効ではないことは昨年度の結果から明らかであった。そこで、移植した後腎組織片を回収してELISA法で定量する方法および免疫組織学的に検出する方法へ変更すべく現在予備検討中である。 今年度は動物実験系の確立とEPO測定法の検討に終始し、MSC投与法の比較検討を行うまでに至らなかった。しかし、問題点が明確となり、具体的な改善策を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、実験法の改善を進め再現性の向上に努めるとともに、来年度はラット腎性貧血モデルを用いてMSC投与法の比較検討を行う。 新たな試みとして、MSCの投与に代わる方法として、MSCの培養上清を用いることを検討している。MSCの投与は細胞浮遊液として血管より注入するため、常に血管を塞ぐ危険性を伴う。そこで、その代替法としてMSC培養上清を用いることを現在検討中である。MSC培養上清を用いることは、他の組織で用いられて効果があるという報告があり(BBRC. 2013; 435:327-33、Cell Transprant. 2015; 24:2657-66)、その場合の有効成分は細胞が分泌する多種のサイトカインなどの成分であるとされている。本研究においてもMSC培養上清を用いることで、実験方法の簡便化と、その後の有効成分の検討などに有用であると期待している。今後は、MSCとともにその培養上清の使用も本研究のおいても効果が期待できる。 また、EPOの産生を組織学的・免疫組織学的に検索することにより、移植後の後腎の生着・発生過程におけるEPO産生細胞の同定も行いたい。
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Causes of Carryover |
実験がEPOの定量まで進まなかったため、次年度にこれらを使用して実験を行う。
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