2016 Fiscal Year Research-status Report
カット長を長くした新たな生検針による、臨床上有用でない前立腺癌の識別能の向上
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16K20166
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
梶川 圭史 愛知医科大学, 医学部, 助教 (70620045)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / 前立腺針生検 / 合計コア腫瘍長 / insignificant cancer / active surveillance / 腫瘍体積 / 生検コア腫瘍量 / 前立腺病理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前立腺針生検の新たな方法(生検のカット長を従来のものより長くすることで、生検採取検体量を増やし、より正確な腫瘍量を評価することを可能にする方法)を用いた研究である。 申請者は、これまでに生検カット長を長くすることで、生検腫瘍量の正確な評価ができることをシミュレーション上で示し、そのデータを元に新たにカット長を長くした生検針をTASK社と共同で作製した。その生検針を用いた前立腺針生検を、倫理委員会の承認の元で実際に行い、安全性ならびにその臨床効果についての研究を行ってきた。 平成28年度は、新たに作製した生検針を実臨床で使用し、その安全性ならびに有効性について結果の集積を行ってきた。その結果、カット長の長い生検針で生検腫瘍量がより正確に評価できることを示してきた。 今後の研究としては、新たな生検針を使用して前立腺癌と診断し、当施設で前立腺全摘除術を行った全摘標本の腫瘍マッピングを行い、insignificant cancerを識別するのに最も有用なパラメーターの統計学的解析を行う。また、カット長を長くすることによるinsignificant cancerの識別能の向上に関して検証する。Insignificant cancerと判定するための生検腫瘍量のカットオフ値の算出を統計学的に行ない、生検腫瘍量とその他の因子(年齢、前立腺体積、PSA、PSAD、T stage、MRI所見)を組み合わせることで、ASに適した患者を検出できるか検討し、新たな組み入れ基準(ノモグラムの作成)を確立する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、申請者はTASK社と共同で作製したカット長の長い生検針(long針)を用いた経直腸前立腺針生検を実臨床で行い、その安全性を報告してきた。当教室では、年間200名程度の前立腺生検を行っている。Long針を用いることで、採取できた組織長や生検陽性率が、通常の生検針(normal針)のものと比較すると有意に高いことも報告してきた。 検査後に共通の合併症評価シートを用い、全症例において評価を行った。また、カット長を長くすることで、疼痛の増悪も懸念されたため、生検後にフェイススケールを用いて患者の自己疼痛評価を行った。結果、疼痛や合併症含め従来の方法と比べても有害事象はなく、安全に施行できることを報告した。 次に、long針で行った症例の生検のコア1本1本の長さを、病理スライド上で計測を行ない、生検コアにおける腫瘍部位をマークし長さを計測した。生検コア長との比率から実測での腫瘍占拠率や最大コア腫瘍長、合計コア腫瘍長を測定することで、各種生検腫瘍量パラメーターを算出した。また、生検結果とも照らし合わせることで、生検陽性率の算出が可能であり、normal針とlong針とでの統計学的に比較検討を行なっている。 また、実際にlong針で生検を行い、局所前立腺癌と診断され、当教室で前立腺全摘除術を受けた患者さんを対象とする。当教室では年間約100例の前立腺全摘除術が行われている。全摘標本上で腫瘍部位をGleason score別でマッピングを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は以下のとおりである。 マッピングした標本をスキャンでコンピューターに取り込み、ソフトウエアの3D slicerを用いて三次元モデルの構築を行う。そのモデルを用いて、前立腺内の腫瘍個数や最大腫瘍体積、合計腫瘍体積といった腫瘍の個別解析を行う。生検腫瘍量の各種パラメーターに、PSAやPSAD、前立腺体積、年齢、生検陽性本数などを含めた項目の中で、insignificant cancerを識別するのに最も有用なパラメーターを単変・多変量解析を用いて解析を行う。シミュレーションや通常生検針における結果から有用性が示唆された合計コア腫瘍長(TLC)の有用性の確認も行う。さらに、insignificant cancerの識別能をROC分析のAUCから算出し、normal針の結果と比較することで、カット長を長くすることによる識別能の向上に関して検証する。さらに、0.5 ml以上の腫瘍を含まない前立腺癌と判定するためのTLCのカットオフ値の算出を統計学的に行う。腫瘍体積とGleason scoreや全摘標本における断端陽性の有無を合わせることで定義されるinsignigficant cancerを、生検腫瘍量とその他の因子(年齢、前立腺体積、PSA、PSAD、T stage、MRI所見)を組み合わせることで、ASに適した患者を検出できるか検討し、新たな組み入れ基準(ノモグラムの作成)を確立する。 これまでカット長の長い生検針を用いて前立腺癌と診断し、当施設で前立腺全摘除術を施行した症例数が蓄積されている。上記の通り、前立腺全摘標本のマッピングが研究の重要なポイントとなる。研究費を利用して、新た顕微鏡を購入したため、腫瘍長や腫瘍体積の計測・算出が容易になり仕事効率の向上が予想されるため、この調子で研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究費の中で主な支出計画の顕微鏡の購入が平成29年04月にずれ込んだため、平成28年度分としての計上できていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
顕微鏡の購入と学会発表旅費、ならびに統計ソフトの購入にあてる予定。
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