妊娠初期末梢血NK細胞の網羅的遺伝子発現解析による妊娠維持機構の検討

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K20203
• Research Institution: Jichi Medical University
• Principal Investigator: 石田 洋一 自治医科大学, 医学部, 助教 (70772143)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 末梢血NK細胞 / 妊娠 / 網羅的解析 / 遺伝子発現 / マイクロRNA / 妊娠維持機構 / 生殖医学

Outline of Annual Research Achievements

当院に通院している患者から同意を得て、妊娠前（卵胞期・黄体期）、妊娠初期に末梢血を採取した。卵胞期26例、黄体期17例、妊娠初期22例から血液を採取して、磁気ビーズを用いて末梢血NK細胞（pNK）を分離した。そのうち同一人物から採取した症例については、卵胞期-黄体期9例、卵胞期-黄体期-妊娠初期3例、卵胞期-妊娠初期6例採取することができた。当初、卵胞期と妊娠初期の2群で集める予定であったが、卵胞期から黄体期にかけてpNKの遺伝子発現が変化している可能性を考え、黄体期でも末梢血を採取した。
これまでの実験で、卵胞期、黄体期、妊娠初期のpNKの細胞数について新規知見と思われる結果を得た。pNK分離時に血球計算盤を用いてpNK細胞数をカウントしたところ、卵胞期から黄体期にかけてpNK細胞数の有意な増加を認め、黄体期から妊娠初期にかけて減少傾向を示した。これらの結果から、卵胞期から黄体期にかけて、また黄体期から妊娠初期にかけてpNKの遺伝子発現が変化している可能性が考えられた。この仮説を検証するために、今後、卵胞期、黄体期、妊娠初期の末梢血を用いて、遺伝子発現マイクロアレイ、miRNAマイクロアレイを行う予定である。現在遺伝子発現マイクロアレイの準備をしている。
我々の先行研究では、妊娠初期と妊娠後期のpNKの遺伝子発現マイクロアレイによる網羅的解析では、妊娠維持機構に関与する可能性のあるKIR (Killer Immunoglobulin-like Receptor) などの遺伝子発現が有意に変化していた。これらの遺伝子発現変化のうちの主なものについては RT-PCRで確認(validation)した。今後計画中の卵胞期、黄体期、妊娠初期のpNKの網羅的解析については、RT-PCRによるvalidationも行う予定である。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

本研究では、同一人物の卵胞期、黄体期、妊娠初期の末梢血を用いて網羅的解析を予定しているが、同一人物から3時期の試料を入手できた症例がまだわずか3例と少ない。現在も症例をリクルートしている。

Strategy for Future Research Activity

卵胞期、黄体期、妊娠初期の3群で網羅的解析を行うために、マイクロアレイ実験の費用が当初計画していた予算では足りない可能性がでてきた。現在の研究費の範囲内で実施が難しい場合は、現在の科研費は、症例を十分に集積するために使用することを検討している。そして、本研究の最終年度（H29年度）に、本研究の継続申請を行い、新規研究費を獲得できた段階でマイクロアレイ、RT-PCR、および、遺伝子解析ソフトであるIPA (Ingenuity Pathway Analysis) を用いた機能解析を行うことを検討中である。

Causes of Carryover

末梢血検体の採取が困難であるために、マイクロアレイの準備にやや時間がかかっている。マイクロアレイ用の試薬・消耗品を当該年度に購入しなかったため、次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

遺伝子発現マイクロアレイ、miRNAマイクロアレイの実験費用に使用予定である。