2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヘパリン結合性成長分化因子ミッドカインのヒト胎盤形成における役割
Project/Area Number |
16K20213
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
菅野 秀俊 東海大学, 医学部, 助教 (90631804)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 絨毛細胞 / 胎盤形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト胎盤形成において絨毛細胞(trophoblast; TB)の分化や浸潤は厳密に制御されているが、この機構は十分解明されていない。本研究では、胎児特異的蛋白で多彩な機能を有する成長分化因子midkine (MK)に着目し、TBにおける MKの役割について検討した。本年度の研究により、胎盤のMK発現プロファイルについてはヒトとマウスとは異なる挙動を呈し、マウス胎盤ではMK mRNAレベルは妊娠中ほぼ一定であるのに対して、ヒト胎盤においてはMK mRNAは妊娠初期には高発現レベルであったが妊娠後期の発現レベルは劇的に減少することが明らかとなった。これは我々のこれまでの妊娠各時期の合胞体絨毛細胞(STB)の免疫染色の結果とも合致するものであった。MK局在はSTBの他、EVTにおける局在も認められるが、これらの細胞でのMKの機能は不明である。手がかりを得るため、EVTのモデル絨毛細胞株であるJEG-3細胞を用いて一過性にMKを強制発現させ、次世代シークエンサーを用いたRNAseq解析により網羅的解析を行った。MK強制発現群とコントロール群で5倍以上のRNA量増加があったのは、MKとmiRNAを含む17の遺伝子であり、産物が低酸素応答に関連する遺伝子も含まれていた。興味深いことに、今回増加したmiRNAは、以前の我々の検討で同細胞においてsiRNA添加によりMK蛋白発現を20%に発現抑制した際には、今回とは全く逆の挙動(すなわち減少)を示しており、MKシグナルのメディエーター候補の一つと考えられた。以上のように、絨毛細胞におけるMK機能の解明の端緒となる基礎的知見が得られた。
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