2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K20215
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉岡 伸人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10468928)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 精巣組織培養 / 人為的活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
不妊症の約半数は男性因子であり、男性不妊の約90%が造精機能障害といわれている。精子形成にはPI3K/Akt シグナルが必須であるが、その分子機構には不明な点が多い。最近申請者らは、早発閉経患者の残存原始卵胞におけるPI3K/Akt シグナルの活性化により卵胞発育を再生し、患者の妊娠・分娩に成功した。本研究では、造精機能障害患者の残存精原細胞のPI3K/Akt シグナルの活性化を行うことで精子形成を再生し、造精機能障害に対する新たな男性不妊の治療法を開発することを最終目的として、以下の研究計画を予定している。 ①PI3K/Akt シグナルの活性化による造精機能障害モデル動物の精子形成誘導と分子機構の解明。②PI3K/Akt シグナルの活性化で得られた精子の機能と正常性の検証、③PI3K/Akt シグナルの活性化によるヒト精子形成誘導と精子機能解析および正常性の検証についてである。 体外におけるヒト精子形成法の確立は、がん・生殖医療における妊孕性温存においても大いなる福音をもたらす。がん・生殖医療では性腺に対して毒性のある化学療法や放射線療法を行う前に配偶子を凍結保存し、将来への妊娠の可能性を残す妊孕性温存療法が行われている。しかし、精子形成がまだ開始されていない未熟な男児患者では、精巣組織の凍結・融解後の精子形成の誘導が必須とるため、現在のところ妊孕性を温存する手段はない。また、化学療法や放射線療法を行う前に精巣組織を凍結保存し、原疾患の寛解後に精巣組織を移植する方法が検討されているが、がん患者、特に血液がんでは精巣組織へのがん細胞混入の可能性があり、精子形成は体外で完了することが望ましい。従って、本研究により体外での精子形成法が確立できれば、男性不妊治療のみならず、がん・生殖医療にも大きな変革をもたらすことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は前年度に引き続き、精巣組織の体外培養でPI3K/Akt シグナルの活性化により得られた精子の機能と正常性の検証と非閉塞性無精子症患者の精巣組織におけるPI3K/Akt シグナル活性化を用いた精子形成の誘導と得られた精子の機能解析および正常性の検証について研究を行う。 まずPI3K/Akt シグナル活性化による精巣組織の体外培養での精子形成の臨床応用を目指し、本法で得られたKITL 欠損マウスの精子細胞の機能を評価し、その正常性を明らかにする。さらに精巣組織の体外培養でPI3K/Akt シグナル活性化により得られたマウス精子細胞の正常性の検証として正常雌マウスより採卵した卵子を用いた体外授精胚移植にて出生した産仔の体重、胎盤重量、形態異常、臓器異常について正常個体と比較する。さらに次世代への影響を見るために3世代に渡り交配を行い、行動異常の有無、妊孕性、寿命について確認する。また、非閉塞性無精子症患者の精巣組織におけるPI3K/Akt シグナル活性化を用いた精子形成の誘導と得られた精子の機能解析および正常性の検証は、マウスのプロトコールを参考に非閉塞性無精子症患者のMD-TESE 時に余剰となり廃棄する精巣組織を用いて、組織培養下にPI3K/Akt シグナルを活性化させ、精子形成を再生させるトランスレーショナルリサーチを行う。同意の得られた非閉塞性無精子症患者の精巣組織を、マウスを用いて至適化した培養条件で740YPおよびbpV を添加培養し、PI3K/Akt シグナル活性化の状態をマウスと同様の方法で確認する。さらに、培養後の精子形成と各発生段階の生殖細胞の存在をマウスと同様の方法で確認する。
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Causes of Carryover |
平成29年度では精巣組織の体外培養でPI3K/Akt シグナル活性化により得られたヒト精子細胞の機能と正常性の検証について研究を行う予定でいるが、本法で得られたヒト精子の機能と正常性の解析に、体外受精胚移植は用いられないため、精子の機能解析としては、先体反応の有無を調べるアクロビーズテスト、精子の受精能を調べるハムスターテストを行う。しかしながらこれらの結果で正常性の解析が示されない場合、インプリント遺伝子のメチル化解析を行い、ボランティアの正常射出精子と比較する予定である。これは外部委託の必要があり、かなり高額になると予想される。このことからこれに使う助成金を多く残したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
外部委託として体外培養を行ったヒト精子と健常者の精子のインプリント遺伝子のメチル化解析を行う予定である。
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