2017 Fiscal Year Research-status Report
薬剤によるHippoシグナル抑制剤による低侵襲性原始卵胞活性化法の開発
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16K20217
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐藤 可野 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究員 (00511073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | IVA / 卵胞発育 / Hippoシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
早発卵巣不全や閉経前後の不妊患者では、卵胞が発育しないため自らの卵子を用いた妊娠は非常に困難である。しかし、2度の手術を必要とするため侵襲度が高いことが問題である。そこで本研究では、Hippoシグナルを抑制する薬剤を直接投与する低侵襲な方法の確立をすることを目的として今年度は以下の研究項目を行った。 昨年度に引き続き、最も有用なHippoシグナル抑制剤の探索を目的として、YAPの核移行を促進するという報告のあるリゾホスファチジン酸(LPA)やトロンビンのHippoシグナル抑制の証明と卵胞発育促進効果の有無について評価した。LPAとトロンビンによる卵巣におけるHippoシグナル抑制効果を調べる為に、10日齢マウス卵巣をLPAとトロンビンを添加した培養液で卵巣組織培養したのち、免疫染色によるYAPの核内移行について調べた。今年度は当学動物施設の工事により動物飼育不可期間があったため、細胞株を用いたHippoシグナル抑制効果についても調べた。細胞株は非黄体化顆粒膜細胞株を用いてLPAとトロンビンを添加した培養液で細胞培養したのち、Hippoシグナルが抑制されるかについて分子生物学的に証明した。薬剤処理後の細胞を経時的に回収しリアルタイムPCR法およびウェスタンブロッティング法を用いてCCN成長因子の発現変化、細胞増殖能について調べた。培養後の変化を非処理群と比較したところ、LPAとトロンビンの両薬剤でCCN成長因子の遺伝子変動の増加がみとめられ、細胞増殖能も増加したことが明らかとなった。申請者等の開発したIVAは、患者が自らの卵子で妊娠可能な画期的な方法であり、本研究により薬剤を用いたHippoシグナルの抑制が可能となれば、低侵襲な卵胞発育の誘導法が開発可能で、自然妊娠すらも可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は当学動物施設の工事により動物飼育不可期間があったため、動物を用いた実験が出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度はHippoシグナル抑制剤を用いて得られたマウス卵子の質とその正常性について検証する予定である。Hippoシグナル抑制剤をマウスに投与し、in vivoでの卵胞発育促進効果の有無について確認する。得られた卵子の質や正常性について評価する。そして1)Hippoシグナル抑制剤のin vivoにおける卵胞発育促進効果について検証する。投与経路としては、卵巣への局所注射、経口投与、経静脈投与が想定されるが、これらの方法で最適な投与方法を調べる。局所注射、経口投与、経静脈投与それぞれにおいてin vivoにおけるHippoシグナル抑制効果についてin vitroと同項目について検討し、卵巣発育促進効果の有無を確認する。濃度はin vitroで効果のあった濃度の約10倍を目安とする。さらに、2)Hippoシグナル抑制剤投与による卵子の質の機能評価とその正常性についても検証する予定である。Hippoシグナル抑制剤を投与したマウスについて、①ゴナドトロピンにより過排卵処理したのちの排卵卵子数の増加、排卵卵子の形態学的正常性を確認する。また、②得られた卵子の体外受精を行い受精率、胚盤胞到達率を調べる。さらに③偽妊娠マウスへ胚移植後の妊娠率、着床率、胎盤重量、胎児体重、流産率について算出する。さらにエピジェネティックな異常を検証するためにインプリント遺伝子のメチル化解析を行う
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Causes of Carryover |
【理由】本年度は、動物施設の工事により動物を用いた実験がやや遅れている。次年度は動物を用いた実験を行うためにマウスの購入が増加すると予想される。また、ヒト卵巣におけるHippoシグナル抑制効果について研究を行う予定であるが、免疫不全マウスの購入が必要不可欠になる。免疫不全マウスは高額なためにマウス購入にかかる経費を十分に残したためである。 【使用計画】LPAとトロンビンのHippoシグナル抑制効果についてin vivoにおける卵胞発育促進効果の有無について調べる予定である。投与経路としては、卵巣への局所注射、経口投与、経静脈投与が想定されるが、これらの方法で最適な投与方法を調べる。局所注射、経口投与、経静脈投与それぞれにおいてin vivoにおけるHippoシグナル抑制効果についてin vitroと同項目について検討し、卵巣発育促進効果の有無を確認する。濃度はin vitroで効果のあった濃度の約10倍を目安とする。さらに動物試験において有効性を確認したHippoシグナル抑制剤を用いて、免疫不全マウスの腎被膜下にヒト卵巣組織を移植し、Hippoシグナル抑制の証明と卵胞発育促進効果の有無を評価する。
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