2017 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム、プロテオーム解析による後天性真珠腫シグナル伝達ネットワークの解明
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16K20221
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
福田 篤 北海道大学, 大学病院, 医員 (70609742)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 後天性真珠腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
後天性真珠腫は、角化扁平上皮Keratinocyteの異常増殖により側頭骨に生じる境界明瞭な非腫瘍性病変である。後天性真珠腫は局所浸潤性で中耳破壊の原因となり、頭蓋内合併症により死亡する可能性がある。これまで多数の研究が行われてきたにもかかわらず、後天性真珠腫の発症原因は未だ明確にされておらず、依然として根本的治療は外科的治療のみである。 真珠腫は腫瘍ではないが新生物に類似した臨床的特徴を示す。これまでの報告から、真珠腫は細胞過剰増殖へとバランスが変化し、浸潤・骨溶解作用が増強された、制御不能な細胞増殖の一例であると考えられている。細胞増殖の調整不全には、細胞内部のゲノム異常やエピジェネティックな変化や外部刺激が関与していると考えられ、この反応には細胞内外の様々なシグナル伝達カスケードが関与すると考えられる。 本年度は、得られた真珠腫検体のHE染色標本を作成し、検体の保存状態などを確認した。いくつかの免疫染色を行い、データーを収集中である。 また、本年度は当科における後天性真珠腫の臨床的な側面からの検討も行った。その結果、EAONO/JOSステージングシステムに従ってステージを分類すると、真珠腫術後の聴力成績はステージが進行する程、聴力成績が悪化するという負の相関が認められることが判明した。また、術前の乳突蜂巣の発育程度がよいこと、術中のあぶみ骨周囲の状態がよいことが、術後聴力改善に有利な因子であることが判明した。真珠腫に対する手術後の聴力成績と、分子生物学的性質との関係についても今後検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、実験器具、試薬などの準備に時間がかかり、真珠腫検体における核酸、タンパク質の発現解析のデータ収集に予定より時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
手術検体から得られた真珠腫上皮の標本から、microRNA、mRNA、タンパク質の発現をバイオインフォマティクスアプローチによって解析を行い、同定された分子群が真珠腫の発生・増殖にいかに関与するかを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
海外学会参加旅費が、ほぼ想定額であったが、多少少額であったため。 30年度も海外学会及び国内学会に複数件参加する予定であり、参加費と旅費に多くを充てる予定である。また、研究成果発表に向けての英文校正も予定している。
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Research Products
(3 results)