2017 Fiscal Year Research-status Report
伸展圧によって誘導される真珠腫形成と骨破壊分子制御メカニズムの解明
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16K20242
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今井 隆介 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00747066)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中耳真珠腫 / 骨破壊 / 破骨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
真珠腫は良性疾患であるにもかかわらず側頭骨を徐々に破壊する疾患である。耳小骨の破壊や骨迷路の破壊によって難聴やめまいがおきる。顔面神経管の破壊によって顔面神経麻痺が起きる。さらには頭蓋底破壊によって細菌が頭蓋内に入り脳膿瘍に至り、致命的になることがある。その治療法は外科的治療しかなく、保存的治療は開発されていない。この疾患の主な病態は骨を破壊することであり、保存的治療はその病態を抑制すること重要だと考えられる。しかし骨破壊メカニズムは未だ解明されていないため、保存的治療法は開発されていない。 これまで、真珠腫の骨破壊については破骨細胞活性化説、真珠腫組織による骨圧迫説、低pHである真珠腫落屑物と骨との酸腐食反応説などが提唱されている。もっとも頻繁に提唱されているのは破骨細胞活性化説であり、電子顕微鏡下で破骨細胞の存在を示されている。だが破骨細胞の存在を否定する報告もあり、まだcontroversialである。一方、古くから骨圧迫説は存在していた。また酸腐食反応説が唱えられており真珠腫内容物が低pHであり、真珠腫のmatrixのタイトジャンクションが弱くなり酸によって骨が腐蝕されているという仮説が報告されている。 真珠腫の発生段階でみられる鼓膜組織の進展刺激が真珠腫の増大あるいは骨破壊へ関与していると仮定し、そのメカニズムについて解明しようとした。さらに真珠腫で破骨細胞が誘導されていることを仮説を証明するために、破骨細胞の存在と統計的に計測しコントロールの骨と比較した。またRNAシークエンスを用いることで遺伝子発現の観点から破骨細胞活性化に関わる組織的背景を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
もともと上皮の進展力が上皮に影響を及ぼしていると仮説を立て、伸展量を用いたin vitroの実験を行っていた。しかし伸展刺激を与えた単層培養の扁平上皮細胞及び線維芽細胞からは有為な各種サイトカインや成長因子の増加が見られなかった。またヒトの扁平上皮細胞の線維芽細胞の共培養において破骨細胞誘導因子であるRANKLの発現は認めず、伸展刺激を加えても線維芽細胞からRANKLの発現はみられなかった。 一方真珠腫の破骨細胞存在について検証し有為に破骨細胞が上昇していた。真珠腫組織からRANKLのmRNAが上昇し、RNAシークエンスで破骨細胞を誘導する遺伝子群が有為に上昇していることを見出した。これは真珠腫における破骨細胞活性化説が正しいことを裏付け、真珠腫の病態解明に近づいたと言える。さらに我々は過去の文献に基づいたコンピュータ解析を行いRANKLの上流について検証しいくつかのサイトカインが候補に上がった。これらをELISAで実際に真珠腫に含まれているかを検証した。それらの候補のうち、IL1bが真珠腫中に多く含まれ、in situ hybridizationで炎症細胞が強く分泌していることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は論文を投稿し、学会で発表してく予定である。
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Causes of Carryover |
論文校正および投稿費、リバイスの実験費用、学会発表に関わる費用が必要と考えられる。
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Research Products
(2 results)