2017 Fiscal Year Research-status Report
中咽頭癌における種々のウイルス検出とウイルス共感染が及ぼす臨床的意義
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16K20252
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
吉田 真夏 高知大学, 医学部附属病院, 医員 (60748812)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中咽頭癌 / ウイルス / 感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
中咽頭扁平上皮癌の原因には大きく2つに分けられる。1つはタバコや飲酒が関係する「ヒトパピローマウイルス(HPV)陰性癌」で、もう1つは性行動などによって感染し得る特定の型のHPVに起因する「HPV陽性癌」である。HPV陽性中咽頭癌患者は陰性患者に比べて、予後が良好で、生存率が高いという特徴がある。したがってHPV陽性例と陰性例は個別化して取り扱うべきものである。 本年度は高知大学医学部附属病院で中咽頭癌と診断された症例で、HPV感染の代用マーカーであるp16発現(組織上での免疫染色)とPCRでの検出との相関について検討した。中咽頭癌19例でp16の染色が施された。この中でPCRにてHPV陽性と判断された14例の全症例で、p16が染まっていた。HPV陰性症例5例ではp16の陽性染色は1例のみであった。 本年度はさらにHPV感染とEpstein-Barrウイルス(EBV)の共感染がどの程度検出されるかについて検討した。EBVは鼻咽頭癌の一部でその発症に関与するウイルスである。EBV由来蛋白であるLMP1が発現され、腫瘍化に働く様々な細胞側遺伝子を活性化し、細胞の悪性形質獲得に関与する。 サンプルは余剰生検材料を使用し、DNAを抽出後PCRに供した。陽性例についてはPCR産物のダイレクトシークエンスによりHPVとEBV配列を確認した。またHPVのジェノタイプも決定した。調べた中咽頭癌30例中HPV陽性例は23例(76.7%)であり、そのジェノタイプに関してHPV16型が18例(78.2%)、HPV18型が5例(21.7%)であった。HPV陽性23例中EBVが検出されたのは7例(30.4%)であり、その7例ともHPV16型であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も中咽頭癌症例の集積にあたり、HPV感染の代用マーカーであるp16発現(組織上での免疫染色)とPCRでの検出との相関について確認することができた。さらに、明らかにされていなかった中咽頭癌におけるHPVとEBVの共感染について、その頻度を調べることができた。 以上を総合し、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらに症例数を増やして、HPVとEBV共感染する中咽頭癌症例を探索し、その臨床的意義を追求していく予定である。さらにEBV以外のウイルスの検出も試みる。種々のウイルスの検出系は構築されており、ウイルス量も測定していく予定である。
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Causes of Carryover |
試薬を中心に物品費の支出を必要最低限に抑えて予算を執行したため、若干の繰越金が発生した。 次年度も引き続き遺伝子検出関連試薬、蛋白発現解析用試薬、プラスティック器具などの物品費を中心に予算を計上する。また研究の続行に必要性が生じた場合、備品購入に充てる。
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