2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔粘膜上皮シートを用いた経口的移植手技による傷害声帯治療法の確立
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16K20286
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
深堀 光緒子 久留米大学, 医学部, 助教 (50529310)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 培養重層上皮 / 声帯粘膜再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)声帯瘢痕モデルの作製と機能評価:片側声帯を声帯筋層まで切除し、6ヶ月後に喉頭を摘出して、声帯瘢痕モデルとし吹鳴実験を行った。声帯粘膜波動は減弱し位相差を認めた。 2)上皮シートの作製と経口的手技による移植:口腔粘膜を採取し、上皮細胞を分離し自己血清を用いた培養液で培養した。また上皮下組織から線維芽細胞を培養し継代して細胞を回収した。回収した上皮細胞をCell Culture Insert(Becton Dickinson)を用いて線維芽細胞と共培養し培養重層上皮を作成した。走査型電子顕微鏡、HE染色、免疫組織化学(サイトケラチン、ビメンチン、Eカドヘリン)を用いて、作製した培養重層上皮は形態および組織学的に声帯粘膜上皮と類似していることを確認した。 外切開での声帯操作は手術侵襲が大きく術後の創感染が問題となることを踏まえて、可能な限り低侵襲な経口法での移植手技の確立を目指した。全身麻酔下に直達喉頭鏡を経口的に挿入し、硬性鏡で声帯を明視下とし、メスを用いて瘢痕を切除した。直径15mmのフィルム上に、作製した上皮シートの上皮基底細胞が上面となるよう付着させ、喉頭用鉗子で把持し声帯切除部へ移動させ、切除部へ上皮シートをフィルムごと軽く押し付け(約10分間)、培養組織が声帯側へ残るようにフィルムのみをゆっくりと剥がし切除面へ接着させた。さらにフィブリン糊を用いて固定した。自発呼吸を再開し十分な換気が可能になったことを確認したのち、気管内挿管チューブをゆっくりと抜去した。内視鏡で移植片が脱落していないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機器の購入、移植実験が順調に行えたため。
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Strategy for Future Research Activity |
移植片の安定した生着性と安全性について、声帯組織再生過程での移植部とその周辺で生じる細胞および細胞基質の分布や密度などの変化について検証する。 ①移植1週間、1ヶ月、2ヶ月後、6ヶ月後に内視鏡による声帯の観察を行い、声帯形の経時的な変化を記録する。②移植後1ヵ月、上皮化が完成すると考えられる移植後2ヶ月、瘢痕形成が完了すると考えられる6ヶ月のタイミングで喉頭を摘出する。③摘出喉頭を用いて、ストロボスコピーを用いた吹鳴実験による声帯粘膜波動の評価と音響分析を行う。移植側声帯と正常声帯および声帯瘢痕モデルとの比較を行う。④摘出喉頭を10%ホルマリン固定し、脱水、パラフィン包埋し、前額断大切片標本を作製する。HE染色、アルシアンブルー染色、エラスティカ・ワンギーソン染色、酵素抗体法による免疫組織化学的に検討する(サイトケラチン、ビメンチン、Eカドヘリン)。⑤移植側声帯の粘膜上皮および上皮下組織の層構造を観察し、経時的な組織構造の変化を検証する。また移植声帯と正常声帯および声帯瘢痕モデルとの比較を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度に参加する予定であった国際学会および論文校閲を含めた論文作成料を次年度に使用する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に参加する予定であった国際学会および論文校閲を含めた論文作成料を次年度に使用する。
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