2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K20287
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Research Institution | The Tazuke Kofukai |
Principal Investigator |
金井 理絵 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第5研究部, 研究員 (30574008)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マウス鼓膜 / 鼓膜穿孔モデル / 3層構造 / 鼓膜輪 / ツチ骨柄および臍部 |
Outline of Annual Research Achievements |
鼓膜穿孔閉鎖治療では鼓膜再生の源となる細胞を誘導するために穿孔の辺縁を切除する、いわゆる、新鮮創化を行う。鼓膜再生の源になる組織幹細胞が鼓膜のどこかに存在する可能性があるが、その局在や穿孔閉鎖における動態は不明な点が多い。マウスを用いた動物実験によって鼓膜組織幹細胞の局在や穿孔閉鎖における動態を調べることが本研究の目的である。 それに先立ってマウス鼓膜の摘出、病理標本の作製、鼓膜穿孔モデルの作成などの基本的手技の確立が必要であった。そこで、C57BL/6マウスを用いてマウス鼓膜の観察方法の確立、鼓膜穿孔の作成、マウスの鼓膜穿孔が自然閉鎖するまでの期間の調査、摘出したマウス側頭骨の処理、マウス正常鼓膜および鼓膜穿孔モデルのHE染色標本作成を行った。 全身麻酔下で複数匹のマウス鼓膜に30G針を用いて鼓膜に大穿孔を作成し、経時的に観察を行ったところ、約2週間前後で鼓膜穿孔が閉鎖することがわかった。また、外耳道とブラが一体化した状態で側頭骨を摘出し、脱灰、脱水ののちに凍結切片を作成し、HE染色を行った。マウスの正常鼓膜はヒトと同様に上皮層、中間層、粘膜層の3層構造で構成されており、鼓膜輪付近およびツチ骨柄および臍部周辺に核を要する細胞が密集していることがわかった。このことから再生の源になる増殖能の高い細胞が鼓膜輪付近、ツチ骨柄周囲に存在する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は正常鼓膜の凍結切片に免疫染色を行い、上皮層、中間層における組織幹細胞を同定するところまで行う予定であったが、マウス鼓膜の形態を維持した状態で摘出し、鼓膜に亀裂がはいらないように凍結切片を安定的に作成できるようになるまで時間を要したため予定より遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
上皮層については上皮系、中間層については間葉系マーカーを用いてマウス鼓膜に対し免疫組織学的評価を行い、かつ、BrdU, Ki-67などによる染色で細胞分裂の盛んな領域を同定する。これを鼓膜輪、臍部、緊張部、弛緩部など部位ごとに評価し、上皮層、中間層における組織幹細胞に局在を同定する。また、鼓膜穿孔マウスを経時的にsacrificeし、上記項目を評価し、穿孔閉鎖における細胞の動態を調べる。上皮系、間葉系それぞれにおいてどのようなマーカーの組み合わせると組織幹細胞を証明できるか、という点については今後も検討を要する。
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Causes of Carryover |
初年度は実験の進捗が予定より遅れており、マウス購入数や抗体などの試薬購入が少なかったことと、学会発表の回数が少なく旅費の支出がほとんどなかったため、翌年への繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
免疫染色のための複数種類の抗体購入、マウスの追加購入、国際学会での成果発表、論文作成などに使用する予定である。
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