2016 Fiscal Year Research-status Report
流体力学的アプローチによる瞬目時摩擦刺激に対する角膜上皮細胞の応答
Project/Area Number |
16K20295
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
宇都宮 嗣了 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (50646065)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 角膜上皮 / 瞬目 / シェアストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
角膜表面を形成する角膜上皮は瞬目によって涙液を供給され健全性を保っているが、同時に絶えず上眼瞼の摩擦による機械的刺激を受けている。瞬目による機械的刺激は物理的に角膜上皮を障害するだけでなく、何らかのシグナル伝達に関与している可能性も考えられるが、その詳細は未解明な点が多い。上眼瞼結膜上皮と角膜上皮の間に涙液が存在することから、瞬目による摩擦は流体力学的に剪断応力(シェアストレス)として捉えることが可能である。そこで、今回我々は水流シェアストレスを用いて角膜上皮細胞に機械的刺激を定量的に長時間負荷することにより、瞬目の摩擦による角膜上皮細胞への慢性的な機械的刺激を再現し、瞬目時の摩擦刺激に対する角膜上皮細胞の応答を調査した。 ヒト角膜上皮細胞にシェアストレスを24時間細胞に負荷し、経時的に撮影後、負荷後の細胞、培地上清を採取した。Wound healing assayにて創傷治癒を、BrdU assayにて細胞増殖を評価した。また、real time PCRにて増殖因子のmRNA発現を、ELISAにて培地上清中のTGFβ1蛋白濃度を、ウエスタンブロッティングにてSMAD2のリン酸化を検討した。 静置した細胞と比較し、創傷治癒は負荷後の細胞で有意に遅延し、細胞増殖も有意に低下した。増殖因子のうちTGFβ1が最も著明な変化を示し、mRNA発現は負荷後の細胞で有意に増加した。TGFβの下流であるSMAD2のリン酸化は負荷後の細胞で有意に増加した。TGFβ receptor inhibitorであるSB431542を用いて同様の実験を行ったところ、負荷後の細胞でもSMAD2のリン酸化は認めず、創傷治癒遅延や細胞増殖低下も見られなかった。 これらの内容はInvestigative Ophthalmology & Visual Science誌(2016)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究成果はInvestigative Ophthalmology & Visual Science誌に掲載された。 Transforming Growth Factor-β Signaling Cascade Induced by Mechanical Stimulation of Fluid Shear Stress in Cultured Corneal Epithelial Cells.Investigative Ophthalmology & Visual Science 57(14):6382-6388,2016. 培地などの経費が想定していた以上にかかったこと、想定よりやや早く実験が進んだことにより、研究費を前倒し申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロビライは機械的刺激の受容に関与している可能性が考えられる。水流シェアストレスを負荷した角膜上皮細胞の細胞表面マイクロビライを走査型電子顕微鏡にて観察し、マイクロビライの分布、数、長さを解析し、機械的刺激への反応を解析する。N-アセチルシステインを用いてマイクロビライを除去することも可能であり、マイクロビライを除去した場合の反応も検討する。
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Causes of Carryover |
想定より実験計画が早まったため、予算の前倒し申請を行った。 しかし、年度末は研究があまり進捗せず、前倒し申請した予算が余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通り研究を進捗させる。
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