2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K20301
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 幸輔 東北大学, 医学系研究科, 助手 (80708115)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / 緑内障 / アデノ随伴ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜神経節細胞(RGC)障害が病気の本態である緑内障や視神経症は視覚に重篤な影響を及ぼしうる。しかし、それらの疾患に対する治療は、神経細胞障害の誘因(例えば眼圧や炎症)を制御することに主眼があり、既存の治療では十分な効果が得られない場合もある。また、多くの場合、病気の進行は慢性で緩急を伴い、緑内障に関しては、空間的に偏った病態の進行を示す。そこで、疾患に対する空間的・時間的特異度の高い新しい遺伝子治療プラットフォームの開発を目指した。 まずは、以前、同定したストレス応答プロモーター配列(Mcp-1プロモーター)が、障害により転写誘導され、障害の鎮静化に伴い転写が低下することを確認した。次に、この配列の下流に神経保護機能を持ったNRF2遺伝子またはBDNF遺伝子を搭載した遺伝子治療用AAVベクターを作製し、その治療効果を検討した。治療用AAVベクターを硝子体投与したマウスに、視神経挫滅を行い、RGC死を死細胞染色とqRT-PCRにより評価した。その結果、無治療眼に対し、NRF2は37.9%、BDNFは53.8%に死細胞数が低下した。また、RGCマーカーの発現においても治療効果が認められた。続いて、恒常的に転写される既存のプロモーター(CMVプロモーター)とMcp-1プロモーターの治療効率の比較を行った。両プロモーターは、視神経挫滅モデルに対して、同等の治療効果を示した。 適切なストレス応答性プロモーターと治療遺伝子を組み合わせることにより、ストレス下にある細胞でスイッチオンして治療遺伝子を発現し、ストレスが解消されると速やかにオフになり遺伝子発現が低下するという、「障害応答性遺伝子治療」の有効性が示された。本治療コンセプトは、疾患に対する空間的・時間的な治療の効率の向上と副作用の低下に資するもので、眼の内外のあらゆる慢性疾患の治療に有用である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では28年度において障害ストレスに対するプロモーターの応答性を評価するとともに、治療用AAVを作製し、その有効性の評価を行い、29年度には毒性試験を行う予定であった。既に、障害応答性遺伝子治療について、マウス視神経挫滅モデルを用いて既存の遺伝子治療プラットフォームと同等以上の治療効果があることを示しており、毒性試験にも着手している。これらのことから、順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
障害応答性遺伝子治療について、既存の遺伝子治療プラットフォームと比べて同等以上の治療効果があることを示すことができた。続いて、長期試験を含む毒性試験を行って評価している途中であり、試験を重ねて「障害応答性遺伝子治療」の有効性について評価していく。また、必要に応じて、ツールの完成度を高める作業を進めていき、本治療コンセプトの応用についての可能性を探っていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画が順調に進行したため、本来、大量に使用する予定であった、AAV作製用の大量のプラスミド精製用品と培養細胞用品、精製濃縮のためのカラムの購入費用が最小限になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画以上に研究が進んでいるが、遺伝子治療ツールの完成度を高めるための実験に、新たなAAV作製費用と評価用の分子生物学用試薬と動物購入費用が必要であり、そのための費用に使用する計画である。
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