2016 Fiscal Year Research-status Report
Akitaマウス(KK/Ta-Akita)を用いた重症糖尿病網膜症モデルの作成
Project/Area Number |
16K20314
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
一山 悠介 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (10749021)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 糖尿病網膜症 / モデルマウス / Akitaマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病網膜症は本邦における失明原因の第2位であり、失明者減少ますますの基礎研究、臨床研究が望まれている。これまで、糖尿病合併症の基礎研究を行うためのモデルマウスを作成する際、ストレプトゾシンなどの薬剤投与による方法や外科的方法などが用いられてきたが、これらの方法では薬剤や外科的侵襲による影響を排除することができず、合併症評価の実験には不向きとの指摘がある。そこで1997年インスリン生成にのみ関与する遺伝子( Ins2Akita 遺伝子)の単一変異により糖尿病状態となるAkitaマウス(C57BL/6-Akita)が開発され、糖尿病の研究のため世界中で幅広く使用されている。 しかしながら、Akitaマウスは著明な高血糖状態が持続するにもかかわらず、その腎病変は軽度にとどまることが報告されている。その後の検討で、Akita マウスの背景であるC57BL/6ストレインが糖尿病性腎症への抵抗性を示す原因と判明し、同実験においてKKストレインマウスは糖尿病性腎症への感受性が極めて高いことが分かった。この結果に基づき, Ins2Akita 遺伝子を KKストレインマウスに導入した新型Akitaマウス(KK/Ta-Akita)が開発され、進行性の糖尿病性腎症を発症することが示されている。 網膜症についても腎症同様にAkitaマウスでは軽度に留まり、発症も生後6か月以降と遅いことが報告されている。これも腎症同様、C57BL/6ストレイン背景であることが原因であると推測され、背景を糖尿病に感受性の高いKKストレインマウスにした新型Akitaマウスでは、より早期により重度の網膜症を来たすことが期待されるが、これまで新型Akitaマウスの網膜症を評価した報告は存在しない。 そこで新型Akitaマウスを用いて網膜病変を評価し、より重度の糖尿病網膜症を来すマウスモデルの作成を試みる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Akitaマウスでは従来型(C57BL/6-Akita)、新型(KK/Ta-Akita)ともに空腹時血糖は400mg/dlを超えており著明な血糖上昇を認めた。 蛍光眼底造影検査では、従来型、新型ともにAkitaマウスでは網膜血管構造に明らかな変化を認めず、網膜フラットマウントによる網膜血管密度の定量化においても、新型Akitaマウスは従来型Akitaマウスと比較し、血管密度に有意差を認めなかった。 網膜中のVEGF-A、VEGFR2、TNF-αのmRNAをリアルタイムPCRを用いて定量したが、従来型、新型ともにAkitaマウスではWild typeと比較しにおいて有意な変化を認めていない。 以上より現時点では従来型、新型ともにAkitaマウスでは、著明な高血糖を示すにも関わらず、糖尿病網膜症の出現を確認することはできていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、フラットマウントした網膜切片に対し免疫組織染色を行い、毛細血管瘤形成や周皮細胞脱落などのより詳細な血管構造変化について比較検討を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
必要物品を購入した上で、わずかに次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は免疫組織染色を行う予定であり、高額な抗体が複数必要となる見込みであるため、そちらに充てる予定である。
|