2016 Fiscal Year Research-status Report
網膜変性モデルにおける視細胞と血管障害の相関とその分子機序解明
Project/Area Number |
16K20319
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
折田 朋子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50467792)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 網膜色素変性 / 視細胞 / 網膜血管内皮細胞 / Prom1 |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜色素変性は、網膜の視細胞のうち、桿体細胞の変性および細胞死を生じる疾患である。しかしながら病変の首座は桿体細胞だけにとどまらず、徐々に網膜血管の狭細化が生じ、錐体細胞にも変性がおよび、ついには視力低下をきたす。この疾患に対する治療法はまだ確立されていない。一方、網膜血管の再構築をすることで錐体細胞の変性を防げるという報告もある。本研究の目的は、網膜変性を引き起こすモデルマウスを用いて、網膜色素変性における血管障害の分子メカニズムについて病態解明を行い、より特異的な治療法を開発することである。 本研究では視細胞と血管内皮前駆細胞に局在を認めるProm1に焦点をあて、網膜におけるこの分子の機能およびその作用機序を明らかにし、網膜色素変性の視細胞変性と網膜血管異常の共通の分子機序解明を目的とする。最終的には、網膜色素変性の進行を抑制する新たな治療法の確立を目指す。本研究により網膜色素変性における網膜変性と血管障害の相関関係およびその発症機序の解明がなされ、薬物開発において新たな標的分子及び指針を与えると思われる。 具体的な研究方法は以下のとおりである。①正常な視細胞と網膜血管おける内皮細胞、周囲細胞におけるProm1の発現を生化学的および分子生物学的に検討する。②作成したProm1変異マウスでの発達過程における網脈絡膜などの眼組織および網膜脈絡膜血管形成などを組織学に検討する。③Prom1変異マウスにおける網膜視細胞と血管内皮細胞のマーカーの発現を経時的に免疫組織学的あるいは生化学的に検討する。④Prom1変異マウスにおいて、フルオレセイン蛍光眼底造影検査等を行い、網膜血管障害や循環異常等を検討する。さらに、OCTにより網膜構造の変化についても評価する。⑤最終的にProm1分子をProm1変異マウスの眼内にてウイルスベクター強制発現させ、網膜および血管障害への作用を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず第一の目標であるProm1変異マウスの作成についてであるが、これはすでに成功し、現在それらを解析している最中である。網膜血管内皮細胞の大きさが野生型と比較し小さくなっていたことが認められた。また網膜以外の異常も多数見つかっており、腎臓の繊毛の密度と長さが著しく減少しており、血尿が観察された。 また今回の研究では、Prom1がカルシウム作動性塩化物イオンチャネル(CaCC)であること、さらにProm1が培養細胞においてPI3Kシグナルを惹起し、細胞の形態形成を制御することが明らかとなった。アクチンの重合が促進され、細胞膜動態の調節にかかわっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は引き続き、作成したProm1変異マウスの解析を進めていき、これら変異マウスにおける眼底の形態学的、機能的評価をおこなっていく。具体的には眼底を特殊な眼底カメラで撮影し、網膜色調と網膜血管形成を発達に伴い経時的に評価する。また光干渉断層計(OCT)を用いて黄斑部の網膜厚を比較検討し、特に錐体細胞の形態学的変化を評価する。さらに、網膜循環や網膜血流動態の評価を行うため、フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)を同様に行っていく。網膜機能の評価については網膜電図(ERG)を行い比較検討していく。 また、Prom1変異マウスにおける網膜細胞の増殖能、および細胞死の検討や、Prom1変異マウスへのProm1強制発現に対する影響などを検討していく。
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Causes of Carryover |
共同研修者の一人である、ロンドン大学の大沼信一教授のもとに平成28年4月12日から平成29年2月29日まで研修に行っており、そのため今年度の交付金が消化できていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に達成できなかった研究を現在すすめているところであり、次年度に実行する予定の研究も計画通りすすめていく。
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Research Products
(7 results)