2017 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞分化3次元網膜様組織を用いた網膜神経節細胞の神経突起伸長に関する研究
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16K20320
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
前川 有紀 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (30530456)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞・組織 / 神経科学 / 発生・分化 / 再生医学 / 薬剤反応性 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障や糖尿病網膜症など多くの視神経・網膜疾患において、網膜神経節細胞 (retinal ganglion cell; RGC)が障害されると、これによる視野や視力の障害を回復させる治療は現時点ではなく、神経保護療法や再生医療に期待が集まっているが、ヒトのRGCを得て研究することは容易ではなかった。その中でマウスやヒトの胚性幹細胞や人工多能性幹細胞 (induced pluripotent stem cell; iPS細胞)から立体的な網膜様組織を分化させる手法が近年発表された。この幹細胞由来の3次元網膜様組織は、視細胞、双極細胞、アマクリン細胞、RGCなどが胎生期の発生と類似したタイミングで分化し、眼胞・眼杯様の立体的構造を呈することが知られている。 これまでに、この幹細胞由来の3次元網膜様組織を用いて、RGCの軸索のみを選択的に伸長させる手法を確立し報告した。本研究では、更なる培養条件の最小化、最適化を試みることで、RGC軸索の伸長・維持に関連する因子を検討し、その下流因子の解析や阻害を行い、メカニズムを検証する。これまでに、分化RGCからの軸索伸長において、細胞外基質のラミニンが重要な役割を果たしていることを明らかにした。 また、生理・薬理学的検討に備えて、本手法の簡易化・一般化を図り、安定的に軸索伸長を誘導し、蛍光免疫染色を用いて詳細に形態を観察するプロトコールを作成した。一方で軸索伸長の定量的評価方法についても検討し、画像解析により2値化を行うことで染色を用いずに神経突起を明瞭に描出し、定量する手法をまとめた。 今後は、グリア系細胞を伴ってRGC軸索伸長を誘導する手法を確立し、グリア系細胞の分化とRGCとのクロストークを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、幹細胞由来3次元分化網膜様組織の接着培養開始時における細胞外基質による接着や、分化RGCからの軸索伸長において、細胞外基質のラミニンが重要な役割を果たしていることを示し、更に伸長する神経突起の形態が細胞外基質により異なる傾向を示すことを明らかにした。また、神経突起伸長の定量的な評価を目的として、画像解析による2値化を用いた手法を検討した。一方で、幹細胞由来3次元分化網膜様組織から安定的にRGCの軸索伸長を誘導するプロトコールを作成した。 これらの結果について現在投稿準備中であるが、研究代表者の時間的制約などから、未だ投稿を完了できていない。 また他方で、網膜神経線維萎縮による臨床的な影響に関する評価を検討する側面から、網膜分離症における網膜の構造的変化と術後視力の関連性を検討し、分離の残存ではなく網膜菲薄化が視力予後に有意に関連することを明らかにした。更にRGCが障害される代表的疾患である緑内障の中で、ぶどう膜炎における血管新生緑内障において病勢に影響する因子を検討し、血管新生緑内障の活動性が高い場合に血管内皮増殖因子が高値であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外基質のうちラミニンが3次元分化網膜様組織の接着や分化RGCの神経突起伸長において重要であること、また神経突起の画像解析手法に関して結果をまとめ、投稿を完了する。 引き続き、分化RGCからの軸索伸長がラミニンによって誘導あるいは促進されるメカニズムを検討する。 また、幹細胞由来3次元分化網膜様組織の培養系により得られるグリア系細胞の分化と、各神経栄養因子や受容体の発現状態を解析し、グリア系細胞の分化および分離を検討するとともに、RGC軸索伸長に対する作用を検討する方針である。
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Causes of Carryover |
(理由)おおむね計画通りに使用しているが、論文投稿準備中であり、論文投稿および受理に際してかかる予定の費用は次年度へ繰り越されている。また、物品については消耗品・試薬にかかる費用が行程を見直し削減することにより大幅に縮小された。
(使用計画)次年度は研究協力者とのコミュニネーションを密にして計画を推進する必要がある。論文発表に関連する費用が必要になる予定である。また予定の研究を次年度継続するための消耗品や試薬購入の為に利用する。
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