2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K20326
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
丸山 悠子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60516003)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 角膜移植 / 前房水 / 炎症性サイトカイン / miRNA / 培養ヒト角膜内皮細胞 / 角膜内皮移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
角膜移植は、角膜内皮障害の唯一の治療法であるが、移植後ドナー角膜内皮細胞密度は経年とともに低下し、再手術を余儀なくされる場合が多い。一方で、一部の患者では、当該細胞密度が長年高水準で維持される場合も見られる。この差異に係る科学的解釈は、現在のところ明確ではない。本課題では、この問題についてドナーヒト角膜内皮細胞 (Seed) の培養による細胞亜集団組成並びにレシピエント前房内微小環境 (Soil) の可溶性miRNA、サイトカイン類などの組成の両面から解析を行い、長期予後規定因子を明確にすることを目的とする。現在までに、角膜移植に用いたドナー角膜組織の残余組織を我々の確立した方法で培養し、CD抗原で規定されたエフエクター細胞亜集団の存在比率をP0において100例以上、P1において82例に就いて解析終了した。同時に、角膜移植や培養ヒト角膜内皮細胞注入による再生医療を施行した患者31人の前房水中のサイトカインを27種類解析済である。IL-1Ra, IL-6, IL-8, G-CSF, GM-CSF, MCP-1, IP-10, VEGFの8種類が多量に含有されることが判明した。レーダーチヤートでの解析では術前のサイトカンプロファイルと培養細胞注入による角膜内皮組織再建の即効性・遅効性の間には相関は見出されていない。エフェクター細胞亜集団の存在比率に相関するものとしてドナー死亡後、角膜組織保存までの時間が逆相関した。同じ前房水のmiRNA含量並びにそのプロファイルについても白内障患者19例の前房水を対照に、69例の細胞注入・角膜移植患者前房水を解析した。角膜移植患者で低下するmiRsを2種を同定しその機能の検定を29年度実施予定である。逆に、角膜移植患者前房水で上昇するmiRsも4種同定された。前房水中のサイトカインが高値の時に発現の高いmiRsは3種、発現低下のものはなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに、角膜移植に用いたドナー角膜組織の残余組織を我々の確立した方法で培養し、CD抗原により規定されたエフェクター細胞亜集団の存在比率をP0において100例以上、P1において82例に就いて解析終了した。これは予定に比較して凡そ倍以上の検体についての解析に相当する。 同時に、角膜移植や我々の実施する培養ヒト角膜内皮細胞注入による再生医療を施行された患者の前房水中のサイトカインについても双方合わせて80例レベルの解析を進めることができ、前房水中に主に含有されるサイトカインプロファイルを明確にできた。このことはエフェクター含有比率、サイトカインプロファイル、miRプロファイルに就いて相互対応を解析するに十分な検体を得たことを意味する。以上の点で予想以上の進展と言える。 一方、レーダーチヤートでの解析では術前のサイトカンプロファイルと培養細胞注入による角膜内皮組織再建の即効性・遅効性の間に相関は見出されていないなど新たな課題も明確にできた。前房水中のサイトカインとmiRsのプロファイルの相関解析についてはほぼ予定通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
①疾患ドナー角膜の解析(病変細胞の作り出す前房内微小環境の予測)病変細胞により産生される因子を特定。各亜集団の作り出す液性因子との対応。一部の亜集団は病変細胞と一致?→ in vitro 疾患モデルへの発展性。前房水内のサイトカイン・miRs プロファイルの解析結果と比較しどの液性因子が病変(変性)角膜内皮細胞(CEC)由来なのかを明らかにする(CEC以外の産生する液性因子との区別)。 ↓ ②術後6ヶ月、1年、2年の角膜移植もしくは養ヒト角膜内皮細胞注入再生医療の臨床成績と照らし合わせ、(ア)Soil 側液性因子のうち長期予後不良に関連すると思われる候補を絞り込む。その因子は病変CEC由来なのか? CEC以外の産生するものなのか? を特定し、前房内環境コンディショニングの必要性を検討する。(イ)(ア)で特定された因子の作用を培養CECの系で検証する。(ウ)角膜ドナー亜集団組成と長期予後との相関性:どの亜集団が存在するとよいのか? どの亜集団が存在するとよくないのか? 統計処理で明確化。 最終年度にすべての期間の臨床成績と照らし合わせ、実証する。 本課題は29年度の研究をもって終了予定であるが、更に本課題を発展させ、角膜移植片の適応応答破綻機構を解明し、移植治療の長期予後改善を図ることに繋げる。本破綻に角膜前房環境の自然免疫・自然炎症系が如何に係るかは未知の課題である。生体組織障害・死細胞など由来のHMGB(high-mobility group box)タンパク, DNA/RNA などのDAMPs(damage-associated molecular pattern molecules) 並びにToll 様受容体、CLR(C 型レクチン受容体)などの自然免疫受容体の移植巣微小環境における動態解析も併せ検討する方向に繋げる予定である。
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Causes of Carryover |
検体収集が予定外に大学内で終了し、他の目的に採取されたものも活用できたために予定より30万円程度節約できた。 前房水のサイトカインプロファイルが早期に確定し高価なBioplexを用いずにEliza法を中心に研究が展開できたために2セット分60万を節約できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本来の予定に加え、選抜miRの変性内皮細胞への導入と導入細胞の機能変化を追跡する実験を追加する。そのために、miR mimics・同阻害剤の購入、細胞表面抗原発現解析のための抗体購入などで45万円。 更に、標的遺伝子検定のためのPCR Array購入や3D geneキットを購入で45万を上乗せ購入予定である。
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